研究課題/領域番号 |
26350958
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
杉谷 加代 金沢大学, 保健学系, 助教 (20162258)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Factor XIII-A / transglutaminase / optic nerve / zebrafish / retina / regeneration / activation mechanism / neurite sprouting |
研究実績の概要 |
血液凝固因子の一つとして知られるFactor XIII (FXIII) は、タンパク架橋酵素として働くTransglutaminase familyの一つであるが、血液中だけでなくさまざまな組織においてもcellular FXIII (cFXIII) として存在し、血液凝固以外の機能を有することが近年報告されている。 ゼブラフィッシュの視神経を実験的に損傷すると、約1ヶ月後には完全なる視神経の再生が観察され、最終的には視覚機能も回復するが、この視神経再生過程においてもcFXIIIの発現が顕著に増加することがFXIII-Aサブユニット(FXIII-A)の網膜および視神経でのin situ hybridization や酵素活性染色、免疫組織化学染色などによって確認された。しかし、通常FXIII-Aは不活性化状態にあり、血液中ではトロンビンによってActivation peptides と呼ばれる一部が切断されることにより活性化タイプのFXIII-Aに変換されるが、損傷視神経や網膜での活性化機構については不明である。そこで本研究では、生体内、特に神経再生におけるcFXIIIの活性化機構をゼブラフィッシュ視神経損傷モデルを用いることにより検索を進めた。ゼブラフィッシュ視神経損傷後の網膜、視神経よりmRNAを抽出しトロンビンの発現について確認したところ、両組織ともトロンビンの発現は認められなかった。一方、視神経損傷後の網膜、視神経の組織をそれぞれ摘出しtotal RNAを抽出後、リアルタイムPCRおよび発現するFXIII-Aのクローン解析を行ったところ、視神経損傷後には活性化タイプのcFXIIIと考えられる5'側のアミノ酸が欠如した短いタイプのクローンが出現し、非酵素的活性化機構の存在が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゼブラフィッシュ視神経損傷後に発現するcFXIIIは、網膜と視神経それぞれについて視神経損傷後、経時的にサンプルを摘出し、total RNAを抽出した。そこから得られたFXIII-AのcDNAをクローニングしたところ、無処置の視神経ではcDNA全長のシーケンスが確実に得られるのに対し、視神経損傷後サンプルからは5'側のアミノ酸が欠如した短いタイプのcDNAが多く見られるという独特の変化をつかんだ。また、リアルタイムPCRによる解析結果から、視神経損傷後1週間以内の早い時期に、酵素の活性中心を含み、しかもactivation peptidesを欠如したと考えられる活性化タイプのFXIII-Aの発現が、full lengthのFXIII-A cDNAに比べて顕著に増加しているという実験結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
1)トロンビンを介さないFXIII-Aの活性化機構の解明 Activation peptidesが欠如した活性化タイプのFXIII-Aが、ゼブラフィッシュ視神経損傷後の網膜および視神経では直接的に発現するのかどうかについて in situ hybridization法を用いて検証する。 2)FXIII-A遺伝子の発現の調節因子について アダルトゼブラフィッシュの網膜では、視神経損傷後も細胞生存因子が発現、さらに、山中ファクターとして知られるiPS 細胞誘導遺伝子であるKLF4, SOX2, c-Myc の3つの転写因子が網膜で発現増加するのが確認された。これら転写因子や細胞生存因子とFXIII-A発現の関係性について検索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画的に予算を執行してきたつもりであったが、当該年度予算の0.6%が次年度に繰り越される形となった。これについては特に理由はなく、年度末のセール等で予算よりも安価に物品が納入されたことによる誤差であり、次年度有効に使用したいと考える。
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次年度使用額の使用計画 |
この予算を含め、今年度はゼブラフィッシュ視神経損傷後に視神経と網膜で発現するFXIII-A遺伝子の経時的に変化するクローンの変化について更に詳細に解析する予定である。また、FXIII-A遺伝子発現に影響する調節因子の解析やSox2,KLF4など山中ファクターとの関連性やRNAi/モルフォリノにより視神経損傷によって活性化される転写因子のin vitro 及びin vivo における発現抑制実験などを計画している。
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