研究課題
本研究では、高脂肪食摂取が腸管腫瘍や炎症性腸疾患に及ぼす影響の原因となる腸内細菌由来代謝物をメタボロミクスにより同定し、その作用機序を明らかにすることを目的とした。平成28年度は、まず、C57BL/6Jマウスに、脂肪のベースが異なる高脂肪食(植物性油脂由来、あるいは、動物性油脂由来)を長期摂取させ、腸内細菌叢にどのような違いが現れるのかを検討した。次世代シークエンサーによる腸内細菌叢解析を16S rRNAに基づいて実施した結果、植物性油脂由来高脂肪食摂取と動物性油脂由来高脂肪食摂取とで、腸内細菌叢が異なることが確認でき、これらの高脂肪食は同カロリー量であることから、高脂肪食成分の違いが、腸内細菌叢のプロファイルに影響を与える可能性が示された。次に、脂肪のベースが異なる高脂肪食(植物性油脂由来、あるいは、動物性油脂由来)をC57BL/6Jマウスに摂取させ、続けて、デキストラン硫酸ナトリウムを処理することで腸炎を発症させ、高脂肪食成分の違いが、腸炎発症に及ぼす影響を検討した。その結果、植物性油脂を含む高脂肪食を摂取した場合と比較して、動物性油脂を含む高脂肪食を摂取した方が、デキストラン硫酸ナトリウム誘発性腸炎の発症に伴うTNFαやTGFβの発現レベルが高値を示すことが確認できた。さらに、動物性油脂を含む高脂肪食を摂取することで、IL17aの発現が亢進されることも明らかとなった。一方、植物性油脂を含む高脂肪食を摂取することで、MCP-1の発現が亢進されることも確認できた。これらの結果から、高脂肪食が腸炎の発症に与える影響は、高脂肪に伴う高カロリー量ではなく、脂肪源の質に大きく左右される可能性が示唆された。
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