研究課題/領域番号 |
26350961
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
橋本 雅仁 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (30333537)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 乳酸菌 / 酢酸菌 / 自然免疫 / 構造解析 |
研究実績の概要 |
プロバイオテック細菌等のように経口で外部から摂取される細菌およびその成分が、腸管内で作用することで宿主の恒常性を維持し、免疫機能を改善することが知られている。またこれまでの我々の研究から、乳酸菌および酢酸菌由来の自然免疫調整成分がアレルギー症状の緩和に関与していることが示唆されている。本研究では、これら細菌の有効成分について、化学構造、機能発現機構、構造活性相関等を明らかにすることで、宿主機能の改善に対するこれらの細菌成分の役割について解明する。 本年度は、以下の2点について検討した。 1)乳酸菌由来リポプロテインの構造解析 リポプロテインの同定のためリポプロテインの単離および酵素消化について検討した。リポプロテインの単離は分取SDS-PAGEを用いて実施した。しかし、リポプロテイン分離は確認できたものの、溶出液中の存在量が微量であり、従来の有機溶媒沈殿法では分離できなかった。そこで、溶出液中で直接酵素消化を試みた。その結果、スクロース、SDS等を含む溶出液中でもトリブシン消化は進行することが分かった。 2)酢酸菌由来リポ多糖の構造解析 酢酸菌のリポ多糖中のリピドAの構造はほぼ決定できているが、論文化にあたって指摘された項目について検討した。糖の立体配置は、すでに決定されている根粒菌由来リピドAと比較して決定した。次いで、酢酸菌由来リポ多糖が黒酢中に存在するかを検討した。黒酢を疎水クロマトグラフィーによって分離し比較したところ、分子量範囲は一致することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
乳酸菌菌体からのリポプロテインの分離量が少なく、構造解析が遅延している。リポプロテインは単離できたものの、その活性最小構造である分解物の分離が実施できていない。現在、膜タンパク質の分解手法について検討中であり遅れは取り戻したい。また、腸管内の作用機構については量的制限からまだ実施できていない。天然物では困難が予想されるため、構造解析後に化合物を合成し実施したい。また酢酸菌に関しては、論文化にあたって成分の立体構造解析を求められたが、糖の標準資料を入手できず停滞していた。昨年度に、構造決定済みの天然物を入手できたため研究を再開しており、近日中に論文化できるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
まず乳酸菌については、現在分取済のリポプロテインを用いて活性最小構造の解析を実施する。天然物では量的に困難と予想されるため、構造解析が終了した後に化合物の合成を依頼し、腸管内での活性化機構について検討に入る予定である。もし合成が困難な場合は、活性フラクション全体を用いた生物活性について検討することで代替する。 酢酸菌については、まずリポ多糖の抽出を進める。また、黒酢由来のリポ多糖画分を用いて生物活性の差異の有無を検討する。その後、リポ多糖の構造活性相関について検討する。この際、リポ多糖の脂肪酸や糖の部分分解や、カルボン酸のメチル化などの部分修飾によって構造を改変し、サイトカイン誘導能やシグナル伝達機構の変化を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品の購入には額が不足したため繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度に物品費として使用する。
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