プロバイオテック細菌等のように経口で外部から摂取される細菌およびその成分が、腸管内で作用することで宿主の恒常性を維持し、免疫機能を改善することが知られている。またこれまでの我々の研究から、乳酸菌および酢酸菌由来の自然免疫調節成分がアレルギー症状の緩和に関与していることが示唆されている。本研究では、これら細菌の有効成分について、化学構造、機能発現機構、構造活性相関等を明らかにすることで、宿主機能の改善に対するこれらの細菌成分の役割について解明する。 本年度は、以下の2点について検討した。 1)乳酸菌由来リポプロテインの構造解析 リポプロテインの活性構造の同定のため、リポペプチドの分離について検討した。リポプロテイン画分を用い、タンパク質分解酵素での消化条件と、HPLCでの分離条件を検討した。その結果、活性化能を持つ疎水性フラグメントの分離に成功した。しかし、現在のところ量的制限から質量分析による分子の検出はできていない。 2)酢酸菌由来リポ多糖の培地中での存在形態 酢酸菌のリポ多糖中のリピドAの構造決定は終了した。一方、酢酸菌のリポ多糖の分離を検討する際、酢酸菌の培養中にリポ多糖が培地中へ放出されることが明らかになった。そこで、このリポ多糖の水中での状態を検討したところ、リポ多糖が外膜小胞中の成分として含まれていることが分かった。外膜小胞を分離してその成分を検討したところ、リポ多糖とともにリポプロテイン様の成分も含むことがわかった。また、自然免疫の活性化能を持つことも分かった。さらに同様の小胞が黒酢中にも存在することが分かったことから、小胞の自然免疫活性化能が宿主の機能調節に重要である可能性が示唆された。
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