研究実績の概要 |
本研究では、3つのフィンガードメインを有し、レドックス応答性といわれているSp1 ZFPを用い、各フィンガードメイン(Sp1-F1,F2およびF3)および3フィンガー体(Sp1-F123)の構造および酸化反応性や安定性、DNA結合能について検討を行った。F1ではジスルフィド型酸化体のみ生成するが、F2 および F3 ではジスルフィド体が生成し、さらに Met 残基のSが酸化されスルホキシ型酸化体も生成することが明らかとなった。また、酸化反応後の生成物を TCEP による還元反応を行ったところ、F1 ではジスルフィド部分は還元されたが、F2 および F3 の場合、ジスルフィド部分は F1 同様にTCEP により還元されSH基に戻ったが、Met残基のスルホキシ部分はTCEP により還元されず、不可逆的な酸化反応が起こっていることが明らかとなった。酸化型の各フィンガードメインは、CysのSH基がS-S結合を形成しているためにZn(II)と配位できず、適切な二次構造が形成できないことが分かった。また、再還元型の各フィンガードメインは、Met残基の酸化によるO原子付加の位置により、フィンガードメインの二次構造誘起のされ方が異なることが明らかとなった。3フィンガー体であるSp1-F123の酸化反応後は、1および2つのジスルフィド結合を含む酸化体、さらにすべてのSH基が酸化されて3つのジスルフィド結合をもちかつ1あるいは2つの酸素をMet残基の部分に有する酸化体が生成していることが明らかとなった。さらに、酸素付加体の酸化体に対してゲルシフトアッセイを行ったところ、すべての酸化体ではDNA結合能は失われており、TCEP還元反応により得られた再還元体では1酸素付加体ではDNA結合能が回復したが、2酸素付加体ではDNA結合能が回復しないことが明らかとなった。
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