研究課題/領域番号 |
26350963
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
境 晶子 大阪医科大学, 医学部, 講師 (30225750)
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研究分担者 |
田中 覚 大阪医科大学, 医学部, 助教 (50595741)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 抗癌剤耐性 / HSPB1 / オリゴマー構造 / リン酸化 / サイトケラチン |
研究実績の概要 |
抗癌剤5-fluorouracil(5-FU)に対する耐性を獲得した細胞株で,発現が増加し耐性に関与する蛋白質としてHSPB1を同定した。本研究では,耐性獲得におけるHSPB1の役割を,そのリン酸化・オリゴマー化・他の蛋白質との相互作用を解析することで明らかにする。 5-FU耐性株におけるHSPB1のオリゴマー化とリン酸化の状態を解析したところ,150 kDa以下のオリゴマーと500 kDa以上のオリゴマーとして存在すること,それぞれのオリゴマーのリン酸化部位が異なっていること,特に150 kDa以下のオリゴマーが5-FU耐性株で増加していることがわかった。HSPB1のリン酸化部位が異なるとオリゴマー形成に影響することが示唆された。 5-FU耐性株においてHSPB1と相互作用する蛋白質を同定するために,Dynabeadsの系を用いた共免疫沈降法を行った。抗体に結合した蛋白質を溶出する時にbeadsに結合させた抗体が溶出されない利点をいかし,溶出液を濃縮用SDS-PAGEで展開し染色して得られた5本のバンドを質量分析で解析したところ,Cytokeratin(CK)8,18,19が同定された。これらはアポトーシス関連蛋白質であり,また,CK8とCK19は5-FU耐性株のプロテオーム解析で発現が変動する蛋白質として同定したものである。 Paclitaxel(PTX)耐性株のプロテオーム解析を行った所,23の蛋白質が発現変動していた。HSPB1はPTX耐性株で逆に発現が低下しており,また抗癌剤感受性に影響しないことがsiRNAを用いた実験で確認され,一方,別のストレス応答蛋白質が耐性に関与することが示された(論文投稿中)。HSPB1と相互作用する蛋白質として共免疫沈降法により同定したCK8とCK18が,PTX耐性株でも発現変動した蛋白質として同定されたことは興味深い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Paclitaxel耐性プロテオミクスの実験と論文纏めに時間を使ったため,PTX耐性株におけるHSPB1の詳細な解析が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
PTX耐性株におけるHSPB1のオリゴマー化の詳細な検討を続け,5-FU耐性株との違いを明らかにする。また,相互作用する蛋白質解析については,同定したCytokeratinがHSPB1のどの大きさのオリゴマーと相互作用しているか,その両耐性株を用いて相違点を調べる。さらに,HSPB1のリン酸化以外の翻訳後修飾についても解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
若干の計画の遅れのため,差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究計画を行うため必要となる試薬類を購入する費用に充てる予定である。
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