研究実績の概要 |
多剤耐性および高度多剤耐性結核菌 (MDR-, EDR-TB) などに共通な、結核菌の細胞壁成分である複合糖質の化学的研究を総合的に行いたく思い、本課題では、未踏領域である巨大な細胞壁成分複合糖質の合成研究をすすめている。本年度は延長期間のため、成果報告が中心であったが、本年度も細胞壁最外部の重要な結核菌アラビナンの分解酵素解析のための、アラビナン部分構造を有するプローブとして、オリゴアラビノフラノシド誘導体を合成した。エンド型加水分解酵素での切断によって生じる還元、非還元末端側の両オリゴ糖フラグメントを質量分析における解析において見分けるための修飾構造として、還元末端残基の1,2-O-アセトニド誘導体を用いることとし、加水分解されうる PNP グリコシド体と合わせて調製することとした。オリゴ糖直鎖 -1,5 結合を有し、直鎖構造及び-1,3-分岐構造を有するアラビナン部分構造をオリゴ糖骨格とすることとし、また、エンド型酵素で一般的に考慮されている基質認識に関わるサブサイトを考慮し、オリゴ糖の還元末端側でサブサイト+1位に対応する残基に 1,2-O-アセトニド基を置換した誘導体、及びサブサイト-1位に対応する残基に PNP基を有する誘導体の合成検討を行った。昨年度までに合成が完了している単糖PNPグリコシドを用いた新規アラビノフラノシダーゼの解析研究も共同研究として進めている。 糖鎖合成における鍵となるグリコシル化反応において分子内アグリコン転移反応の適用範囲について初年度より検討をすすめている。アラビノフラノシル化された海産毒に含まれる連続する1,2-cisグリコシド3糖部の調製、詳細な構造解析をおこない、報告されている天然物のオリゴ糖部のNMRと比較したところ、還元末端側内部構造はアグリコン部の影響があり完全な一致は示さなかったが、非還元末端側糖鎖は良い一致を示した。
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