研究課題
本研究は、低分子化タンパク質の薬物動態改善に寄与する汎用技術の提供を目指して、ヒト血清アルブミン(HSA)に特異的に結合するヒト型アダプタータンパク質を開発し、その機能と構造に関するin vitro分子特性を解析することを目的とする。平成26年度は、以下の3項目を実施した。(1)「複合体結晶構造データの解析とヒトタンパク質スキャホールドの選定」では、ヒトタンパク質のみからなる構造データセットをつくり、GAモジュールのHSA結合界面の主鎖構造座標をクエリーとして類似の部分構造を有するヒトタンパク質を検索し、構造類似度を指標に複数のヒトタンパク質をスキャホールドとして選定した。(2)「移植残基の選別とアダプタータンパク質の設計」では、複合体結晶構造データとPISAシステムを利用して、GAモジュールのHSA接触残基を特定し、さらに接触面積や水素結合数などを指標に各接触残基の機能重要度を順位付けした。GAモジュールと上記で選定したスキャホールドを重ねあわせ、HSA接触残基の位置に対応するヒトタンパク質の残基の情報を収集した。変異に伴うヒトタンパク質の立体構造の不安定化を回避するため、上記の情報を総合した置換適切度を順位付けした。以上の機能重要度、置換適切度、衝突危険度を総合的に判定し、ヒト型アダプタータンパク質のアミノ酸配列を決定した。(3)「アダプタータンパク質および比較対象タンパク質の合成と精製」では、設計した複数のアダプタータンパク質、および比較対象となる天然型ヒトタンパク質(ネガコン)、GAモジュール(ポジコン)を遺伝子組換え技術で合成した。遺伝子を市販の高発現ベクターに挿入し、大腸菌を形質転換した。培養溶菌後の可溶性画分から目的物を回収し、イオン交換クロマトグラフィーおよびゲルろ過クロマトグラフィーで高純度に精製した。
2: おおむね順調に進展している
平成24年度の研究実施計画として予定していた、「複合体結晶構造データの解析とヒトタンパク質スキャホールドの選定」、「移植残基の選別とアダプタータンパク質の設計」の2項目をほぼ遅滞なく達成した。「アダプタータンパク質および比較対象タンパク質の合成と精製」に関しては、計画時に予定していた博士研究員が他所へ転出したため、計画内容の一部を組み替えて実施した。
平成24年度の研究実施計画のうちの未達部分に関しては繰り延べるものの、全期としては当初計画の完遂を目指す。具体的には、平成25年度は、「アダプタータンパク質および比較対象タンパク質の合成と精製」の未達部分、および当初計画分の「アダプタータンパク質のHSA結合活性の測定」と「アダプタータンパク質の構造安定性の測定」を行う。
雇用を予定していた博士研究員が他所に転出したため人件費に未使用分が生じたため。
研究計画を組み替えて現員で可能な課題を先行し、繰り延べた課題に関しては新たな研究員を採用したうえ実施する予定。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (13件) (うち招待講演 4件)
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