本研究は、低分子化タンパク質の薬物動態改善に寄与する汎用技術の提供を目指して、ヒト血清アルブミン(HSA)に特異的に結合するヒト型アダプタータンパク質を開発し、その機能と構造に関するin vitro分子特性を解析することを目的とする。平成26、27年度は、(1)「複合体結晶構造データの解析とヒトタンパク質スキャホールドの選定」、(2)「移植残基の選別とアダプタータンパク質の設計」、(3)「アダプタータンパク質および比較対象タンパク質の合成と精製」、(4)「アダプタータンパク質のHSA結合活性の測定」、(5)「アダプタータンパク質の構造安定性の測定」を実施した。平成28年度は、以下の2項目を実施した。(6)「アダプタータンパク質のHSA結合特異性の測定」では、アダプタータンパク質のHSA結合活性が選択的であることを表面プラズモン共鳴(SPR)法で確認した。アダプタータンパク質がGAモジュールとHSAの結合を濃度依存的に阻害することから、アダプタータンパク質がGAモジュールと同一の結合サイトを認識していることが明らかになった。(7)「アダプタータンパク質の相互作用熱力学解析」では、SPR法測定を異なる温度で行って、結合のエンタルピー変化、エントロピー変化、結合比熱変化を定量的に評価した。その結果、アダプタータンパク質とHSAの結合は、エンタルピードリブンで、かつエントロピー的にも好ましい相互作用となっていることを明らかにした。以上を含む期間全体を通じたin vitro分子特性解析の結果は、目標としたヒト型アダプタータンパク質の開発に成功したことを示すものである。また、本研究を通じて、構造バイオインフォマティクスの活用が分子グラフティング法の高度化に有効であることを実証することができた。
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