研究課題
近年の食の欧米化に伴った血栓性疾患の発症の増加が認められることから、その治療ならびに予防がきわめて重要である。申請者らは、in vitro血栓溶解活性評価系を用いて血栓溶解促進物質の探索を行なった結果、環状ペンタペプチド、マルホルミンを見出した。マルホルミンは、uPA産生細胞を介したプラスミン活性の増加を引き起こし、さらに、マルホルミンはMAPキナーゼ経路を介したribosomal protein S6 kinase (RSK)1を活性化し、マルホルミンによる血栓溶解促進活性がRSK1阻害剤により抑制されることも明らかとした。本研究ではマルホルミンの作用機序を解明することを目的に、ケミカルプローブを作成し、マルホルミンの分子標的の解析を進めることである。本研究の推進によって、細胞性血栓溶解を促進する新しい制御機構が解明され、さらにはマルホルミンの分子構造を基盤とした低分子型血栓溶解剤の創製が期待される。平成26年度は、マルホルミンアフィニティー担体を用いた、マルホルミン高親和性タンパク質の同定を進めた。はじめに、固相ペプチド合成によりマルホルミンのL-Val→L-Lys誘導体(3-LysMA1)を作成し、固相担体上に固定化することによりマルホルミンアフィニティー担体を作成した。次に、アフィニティー担体とuPA産生細胞であるU937細胞の細胞溶解液を反応させ、洗浄後、還元剤入り溶出液によりマルホルミン高親和性タンパク質を溶出した。つづいて、電気泳動によってマルホルミンアフィニティー担体特異的に検出された高親和性タンパク質のバンドを検出し、質量分析によるタンパク質同定を行った。その結果、23kDaのマルホルミン結合タンパク質MBP23(仮)を同定した。次年度は、マルホルミンによる血栓溶解促進活性におけるMBP23やRSK1の機能解析を進めていく予定。
2: おおむね順調に進展している
当初目標としていた、ケミカルプローブを活用した高親和性タンパク質の検出と同定の成果が出ているため。
平成27年度は、これまで見出してきたマルホルミンの血栓溶解促進活性への関与が示唆されるMBP23やRSKについて機能解析を進めていく。また、マルホルミンの活性発現および毒性軽減を目的とした構造活性相関も進めていく。
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Akita J Med
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10.1038/ja.2013.129