研究課題/領域番号 |
26350970
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
根本 直人 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (60509727)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ペプチド / アプタマー / cDNA display / 進化工学 / 次世代抗体 / 架橋ペプチド / 非天然アミノ酸 / cDNA display |
研究実績の概要 |
近年、既存の抗体はモノクローナル抗体であっても品質管理をはじめとする様々な課題も存在することから次世代抗体やペプチドアプタマーが注目されている。特にジスルフィド結合により架橋されたペプチドは血中安定性や熱安定性といった安定化が大きな強みである。従来にない多様な分子表面形状を形成させることができるため分子認識においても強みをもつと考えられる。そこで、ジスルフィド結合に架橋剤を導入することを試みた。これによりジスルフィド結合が形成できない還元的条件下でも安定した架橋構造を保つことが可能となる。 2014年度は当研究室で開発したcDNA display法は、無細胞翻訳系でペプチドやタンパク質を合成(display)した後に磁性体ビーズ上で固定化できるため、この段階で架橋剤を導入しジスルフィド結合を他の架橋に変換できることを実証した。また、この技術開発の中で未架橋のペプチドを除去する方法も確立した。さらに、非天然アミノ酸の導入の検討を行い、東京大学菅裕明教授の技術であるFlexizymeを利用して試験管内で合成した。特に、上記のcDNA display法の利点を生かして、リボソームには取り込めない嵩だかい非天然アミノの導入を検討した。具体的には、クリックケミストリーを用いて翻訳後修飾の形でCy-5のような大きな蛍光団の導入に成功した。 2015年度は前年度の成果を踏まえて、システインの位置をある程度の間隔で固定化したライブラリとランダムにしたライブラリによる同一のターゲットに対してin vitro selectionをcDNA display法により行った。その結果、あらかじめシステインの位置を固定化してその他の領域をランダムにするよりもN末端にシステインを1個固定化し、ジスルフィド結合するシステインの位置をランダムにした方が効率的にペプチドアプタマーを取得できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を遂行する上での基盤となる1)非天然アミノ酸技術の導入、2)cDNA display分子への架橋技術、の両技術は確立することができ、原理的にはこれらを組み合わせることで目標とした非天然アミノ酸含有の人工架橋ペプチドのスクリーニングが可能となった。ただ、架橋剤として二価架橋剤しか行っておらず、これを三価とした場合の分子多様性とその機能向上の関係を明らかにする必要があることがわかった。これには二価架橋剤と同じ効果を持つことがわかっており、すでに取得済みのIL-6Rを標的としたペプチドアプタマーを取得済みであることから、これと三価架橋剤によるペプチドアプタマーを比較することで表面形状分子多様性と機能性の問題を解明することが重要と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
すでに上述したように、本研究を遂行する上での基盤となる1)非天然アミノ酸技術の導入、2)cDNA display分子への架橋技術、の両技術は確立することができ、原理的にはこれらを組み合わせることで目標とした非天然アミノ酸含有の人工架橋ペプチドのスクリーニングが可能となった。ただ、架橋剤として二価架橋剤しか行っておらず、これを三価とした場合の分子多様性とその機能向上の関係を明らかにする必要があることがわかった。これには二価架橋剤と同じ効果を持つことがわかっており、すでに取得済みのIL-6Rを標的としたペプチドアプタマーを取得済みであることから、これと三価架橋剤によるペプチドアプタマーを比較することで表面形状分子多様性と機能性の問題を解明する予定である。非天然アミノ酸を導入することでさらに分子表面形状の多様化を創出する予定であったが、非天然アミノ酸を導入するためには終始因子を除去した特別の無細胞翻訳系を購入する必要がある。この無細胞翻訳系は特注のため高価であるため、3年目の研究費だけでは購入が不可能である。そのため、非天然アミノ酸を導入したうえでの三価架橋剤ペプチドアプタマーの創出は予定変更して、通常のアミノ酸のみからなる三価架橋剤ペプチドアプタマーの創出を行い、二価架橋剤の場合との比較を行うことで、表面形状多様性と機能の関係に迫る予定である。
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