近年、既存の抗体はモノクローナル抗体であっても品質管理をはじめとする様々な課題も存在することから次世代抗体やペプチドアプタマーが注目されている。特にジスルフィド結合により架橋されたペプチドは血中安定性や熱安定性といった安定化が大きな強みである。そして、従来にない多様な分子表面形状を形成させることができるため分子認識においても強みをもつと考えられる。そこで、ジスルフィド結合に架橋剤を導入することを試みた。これによりジスルフィド結合が形成できない還元的条件下でも安定した架橋構造を保つことが可能となる。 2014年度は当研究室で開発したcDNA display法は、無細胞翻訳系でペプチドやタンパク質を合成(display)した後に磁性体ビーズ上で固定化できるため、この段階で架橋剤を導入しジスルフィド結合を他の架橋に変換できることを実証した。また、この技術開発の中で未架橋のペプチドを除去する方法も確立した。さらに、クリックケミストリーを用いて翻訳後修飾の形でCy-5のような大きな蛍光団の導入に成功した。また、2015年度のシステインの位置をある程度のランダムにしたライブラリを用いてin vitro selectionをcDNA display法を行った結果を踏まえ、2016年度は複雑な架橋構造を取るコノトキシンのような人工ペプチドの取得を試みた。システインがランダムに出現するライブラリをcDNA displayにした後、有機溶媒中で架橋剤を投入し水溶液中ではとりえない架橋構造を形成させることで従来にない多様な表面構造を取らせることとした。そのためこれを水溶液中に移し、以前、スクリーニング結果がでているインターロイキン6レセプター(IL-6R)を標的にin vitro selectionを行った。この結果、従来とは明確に異なる配列が取得されてきた。現在、この機能解析を行っている。
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