研究実績の概要 |
がん・白血病や難治性炎症疾患に対する副作用の少ない分子標的医薬が求められている。そして私たちはNF-kappa B阻害剤DHMEQを分子デザインにより発見し、その作用機構を明らかにするとともにがん・白血病を含む数十の疾患動物モデルで、顕著な抑制作用があることを示した。しかし、この化合物は血液中で不安定という短所がある。そこで本研究では、より安定で新しい骨格のNF-kappa B阻害剤を天然物スクリーニングおよびDHMEQの一部骨格を利用した分子デザインから探索した。その結果、微生物からのスクリーニングで、既知フラボンのquercetinとdaidzeinが見出され、さらに研究室の新規フラボンライブラリーから植物由来desmalがNF-kappa B阻害剤であることがわかった。desmalはマクロファージ細胞においてLPS誘導NO産生を阻害し、ヒト卵巣がん細胞においては細胞遊走と浸潤を阻害した(論文は発表済み)。一方、DHMEQのNF-kappa B阻害機構として、p65, p50, RelBなどの特異的cysteine SHに共有結合してDNA結合能を阻害することが知られている。そこで、SHが結合するepoxideのかわりにexomethylene carbonylを導入した、骨格の異なるDHMEQ誘導体SEMBLをデザインして合成した。SEMBLはDHMEQと同等のNF-kappa B阻害活性を示し、培養細胞においては、より強くNF-kappa Bを阻害し、下流のiNOS発現、NO産生、各種サイトカイン分泌を阻害した。卵巣がん細胞においては、より強く遊走と浸潤を阻害した。さらにSEMBLは水溶液中ではDHMEQより高い安定性がみられた(論文発表済み)。そのほか、先行しているDHMEQの多くの抗がん活性・抗転移・抗炎症活性を培養細胞と動物実験で示した。
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