研究課題
本研究ではピロール-イミダゾールポリアミド(PIP)が持つDNA配列認識能力を利用し、ヒストン脱メチル化酵素阻害剤(Histone Demethylase inhibitor: HDMi)の作用領域を局所的にコントロールできる薬剤の開発を目指す。PIPとHDMiの融合分子作成にあたっては、候補となるHDMiの選定を行うことが不可欠であるが、申請時にはNCDM-32およびNCL-1の2種類の化合物をHDMiの候補へ挙げていた。今年度は、これらHDMi分子の開発者である京都府立医大 鈴木孝禎教授からの協力により、NCL-1よりもさらに高い阻害活性能を持つNCD38分子を、融合候補化合物の筆頭として新たに選定することができた。PIPとの融合分子と作成するにあたっては、HDMiの分子構造内にカルボキシル基またはアミノ基を持っていると比較的融合反応を進めやすいが、NCD38の活性中心部位を損なわない位置にカルボキシル基を付与した誘導体(NCD38-COOH) 40 mgを鈴木孝禎教授より提供していただいた。PIP-NCD38の融合分子を作成するための準備として、比較的短い(3-4 mer)のピロールオリゴマーを用いて、融合のための化学反応的な最適条件検討が現在進行中である。最適な反応条件が分かり次第、PIP-NCD38のライブラリー作成を進めていく。さらに、PIPが標的とする遺伝子の候補としては、大腸がん等でpromoter領域が高メチル化状態が良く認められるMLH1を選定し、その領域を狙う7塩基対認識型PIPを3種デザインが完了している。ライブラリーでの検討が成功した後は、この7塩基型のPIPとの融合分子を用いて、より特異的な標的を狙う戦略も進行していく予定である。
2: おおむね順調に進展している
PIPとHDMiの融合分子を作成する際のHDMi分子選定が、本研究開始における最初の大きな課題であったが、申請時に予定していたNCDM-32およびNCL-1よりもさらに活性の高い分子であるNCD38を選定できたことは極めて大きく、PIPとの融合反応に都合の良い誘導体であるNCD38-COOHを大量に得られたことから、PIP-HDMi融合分子のプロトタイプを合成するための準備完了を目指していた今年度の目標は順調に達成できたと考えられる。
平成27年度の初頭は、ピロールのオリゴマーとNCD38-COOHおよびそれに近い構造を持った誘導体を使用して、融合分子作成のための最適条件を決定する。至適条件が決まり次第、5塩基認識型のPIPとNCD38-COOHとの融合分子を順次作成していき、ライブラリーの作成を進める。また、融合分子のヒストン脱アセチル化酵素阻害活性や細胞増殖阻害活性も並行して調べる。現時点で所有するNCD38-COOHの重量は40 mgであり、ライブラリー作成を進めるにあたっては不足する可能性もあるが、その際には鈴木孝禎教授より追加で提供を受けるか、あるいは合成手法を教わることで当方でも合成できるような体制を整える。5塩基認識型PIPの供給が予想外に困難になった場合は、4-5 merのPIPをヘテロダイマー的なコンビネーションで用いる形でのライブラリー構築へ切り替える。
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Nature. Comm.
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