研究実績の概要 |
試験管内分子進化(IVE; in vitro evolution)技術は、標的分子特異的認識能を有する分子を創製するための有効な手段で、バイオマーカー検出用の分子プローブ作製やイメージングツール、などに広く活用できる。特にペプチドをベースとしたIVEは、抗体医薬に代替するバイオ創薬を担う技術として期待されている。我々は、生物進化の過程で保存されてきたある種の生理活性ペプチドの分子骨格がランダムな配列を空間提示するのに都合がよいことを見出し、それを鋳型とするランダムペプチドライブラリからの効率の良いIVE技術を確立した(Nucleic Acid Res, 2009; Molecular Brain, 2011; Anal. Biochem, 2011; Toxicon, 2012 他)。鋳型となる分子骨格は、disulfide (S-S)結合やβ構造などによりコンパクトで堅牢な構造を持つ。そのため、これらの構造を如何に天然に近い形で効率よく再現するかが、ペプチドIVE法の鍵となる。 本研究では、有機ナノチューブが変性タンパク質のリフォールディングを促進し活性タンパク質を再生するのに極めて有用であるという最近の知見(ACS Nano, 2012)に基づき、IVEのプロセスに有機ナノチューブのミクロ環境を利用したより安定で収率の高いペプチドリフォールディングを達成し、IVEの高度化・汎用化を目指した。 研究では、IVE法で用いる有機ナノチューブ の選択 (1)とペプチドライブラリの鋳型となるペプチドの分子骨格 (2)の最適な組合せ、および適切にリフォールディングされる至適条件を探究した。
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