研究課題
クラスター型プロトカドヘリン(c-Pcdh)遺伝子群は、Pcdh-alpha、-beta、-gammaの3つのクラスターからなり、マウスでは計58種類の遺伝子からなる。一つの神経細胞には、異なる種類のc-Pcdh遺伝子が複数発現しており、その種類は個々の神経細胞で異なることが明らかとなっている。また、一つの神経細胞に発現された複数のc-Pcdhタンパク質は、ホモフィリックな接着活性を示すことが報告されている。しかし、現在のところ脳神経系におけるクc-Pcdhの役割は明らかとはいえない。マウス大脳皮質体性感覚野には、生後1週間かけてヒゲからの刺激入力を受けることで形成されるバレルと呼ばれる樽状の特徴的な構造体がある。本研究では、この神経活動に依存した神経回路の形成過程を一つのモデルとしてc-Pcdhの機能解析をするため様々な遺伝子改変マウスの作製をおこなってきた。本年度は、CRISPR_Cas9システムにより昨年度に作製した変異、あるいはloxPを挿入したマウスを交配によりホモ化した。これらのマウスをもとに、さらに変異、あるいはloxPを挿入することでクラスター型プロトカドヘリン遺伝子群の多様性を減少させたマウスの作製をおこなった。また、これまでに作製したマウスを用いて体性感覚野でc-Pcdhの多様性が減少したマウスの解析から、c-Pcdhがバレル形成に寄与することが明らかになってきており、本研究によりバレル形成過程を一つのモデルとしたc-Pcdhの機能を解析する系をつくることができた。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、遺伝子改変技術を用いてc-Pcdh遺伝子群の多様性を減少させた様々なマウスを作製する必用があった。本年度は、昨年度に作製したマウスをもとに、さらに多様性を減少させたマウスの作製をすることができた。また、遺伝子改変マウスを用いた解析によりc-Pcdhがバレル形成に寄与することが明らかになってきており、おおむね順調に進展していると言える。
体性感覚野を一つのモデルとし、本研究により作製した様々な遺伝子改変マウスを用いることでクラスター型プロトカドヘリンの多様性が持つ神経系における役割を追究する。
クラスター型プロトカドヘリン遺伝子群の多様性を明らかにするために必用なマウスを複数作製したが、実験に必用なマウスを増やすのに当初の想定以上に時間を要した。これらのマウスを用いてc-Pcdh遺伝子群の多様性とバレル構造形成との関係をより詳細に解析するためには研究期間の延長が必用と判断したため。
作製した遺伝子改変マウスの飼養、および解析に必用な物品費に使用する。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
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