研究課題/領域番号 |
26350981
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
畝川 美悠紀 慶應義塾大学, 医学部, 特任講師 (10548481)
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研究分担者 |
冨田 裕 慶應義塾大学, 医学部, 講師(非常勤) (60276251)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 光遺伝学 / 脳微小循環 / アストログリア / ニューロン / neurovascular unit / 大脳皮質性拡延性抑制 / 赤血球速度 |
研究実績の概要 |
脳内では神経・グリア細胞・血管はneurovascular unit(NVU)を形成し、相互に連絡を取り合っている。NVUにおけるアストロサイトの役割、病態時の状態を解明するため、光感受性タンパクの1種であるチャネルロドプシン2(ChR2)をアストロサイトだけに特異的に発現させたマウス大脳に光を照射して脱分極を生じさせると、広範な脳血流の増加を来すことを見いだした。ウレタン麻酔下で左頭頂骨を露出し、青色レーザー光(波長488nm)を照射したところ、照射部位より広範囲で迅速な脳血流増加反応が繰り返し惹起された。次に、頭頂骨の一部を除去し、脳表に直接照射した場合の脳血流動態を観察し、各種阻害剤を脳表に滴下後の脳血流反応と比較することにより、そのメカニズムの解明を試みた。さらに、ChR2をニューロンに発現させたマウスにおいて同様の実験を行い、アストロサイトおよびニューロン賦活に伴い、異なるメカニズムを介して血流増加反応が惹起されることを明らかになった。 さらに、神経およびグリア細胞の一過性興奮が周囲に伝播する反応である大脳皮質拡延性抑制(CSD)誘発時の脳血流調節機序を検討するため、二光子顕微鏡、高速度カメラ共焦点レーザー顕微鏡を用いて脳実質内穿通動脈口径、毛細血管内赤血球速度を計測した。初回CSD通過時には著しい穿通動脈収縮と毛細血管内赤血球速度の低下、頻回CSD通過時には動脈拡張と毛細血管内赤血球速度の増加が繰り返されることが明らかになった。 一方、アストロサイトのNa-K-pumpノックアウトマウスにおけるCSD感受性および反応性を検討したところ、CSD誘発閾値が低下し、CSDからの回復が遅延するが、脳血流反応には影響しないことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光照射によってアストロサイトおよびニューロンのみを特異的に刺激することにより、異なるメカニズムを介して脳血流が増加することを明らかにした。国内外で学会発表を行い、アストロサイト刺激時の反応に関してはScentific Reportsに掲載された。更に、ニューロン刺激時の反応の関して専門誌に投稿する論文を作成中である。 CSD誘発時の穿通動脈口径の経時的変化についてはJournal of Cerebral Blood Flow and Metabolismに掲載された。毛細血管内赤血球速度の変化に関して国内外で学会発表を行い、現在論文作成中である。さらに、アストロサイトのNa-K-pumpノックアウトマウスにおけるCSD感受性および反応性に関しては国内学会にて発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
薬理学的手法を用いてニューロンおよぼアストロサイト刺激時の血流増加反応のメカニズムを更に詳細に比較検討し、脳血流調節機序におけるそれぞれの役割を検討する。 二酸化炭素負荷による全身、全脳的に血流が増加する際の脳内血管口径および毛細血管内赤血球速度を求め、CSD発生時の局所的変化と比較することによって脳血流調節機序を検討する。さらに、アストロサイトのNa-K-pumpノックアウトマウスを用いたCSD感受性および反応性についてメカニズムの解明を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文作成時に必要な英文校正、掲載費などに使用する予定だったが、準備が遅れたために前年度に使用できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
執筆中の論文があり、英文校正、専門誌への投稿に際して投稿料、掲載料に使用する予定である。
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