研究課題/領域番号 |
26350982
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
曽根 雅紀 東邦大学, 理学部, 准教授 (00397548)
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研究分担者 |
田村 拓也 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (80396647)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ショウジョウバエ / 神経変性 / 神経変性疾患 / アルツハイマー病 / 認知症 / 細胞内タンパク質輸送 |
研究実績の概要 |
われわれはこれまでに、細胞内タンパク質トラフィッキングの過程に生じた異常が、神経変性を引き起こす重要なメカニズムであることを、独自の研究から明らかにしてきた。そこで本研究では、われわれが独自に発見した、アルツハイマー病原因分子APPの細胞内輸送調節分子であるyataと、小胞体上の輸送調節部位で機能する前頭側頭型認知症(FTD)原因分子との二つの分子に着目し、これらの分子の変異体ショウジョウバエについて遺伝学的解析を行うことによって、ショウジョウバエ神経変性変異体とヒト神経変性疾患に共通する、進化的に保存されている神経変性の普遍的分子機構を明らかにすることを目指している。アルツハイマー病の原因分子であるAPPは、ニューロンの細胞体から軸索輸送によってシナプスに輸送され、シナプス形成を促進することが知られている。ショウジョウバエyata変異体では、ハエ内在性APPの輸送阻害が、末梢運動ニューロンでも観察される。そこで本研究では、ニューロンの細胞体、軸索束、神経筋シナプスが空間的に明瞭に分離している幼虫運動ニューロンの系において、発現誘導したヒト野生型APP、およびヒトアルツハイマー病型変異APPの輸送に対する、yata変異の影響を調べた。まず、抗APPを用いた免疫染色法による解析から、yata変異によってAPP輸送が阻害されることがわかった。次に、ヒトAPP発現誘導による既知の効果である、神経筋シナプスの数の増加に対するyata変異の影響を調べ、ヒトAPPとyataヌル変異との間に予想外の遺伝学的相互作用が生じていることを見出した。これについては今後さらに解析を進めていく予定である。同時に、成虫の脳および複眼におけるyata変異体の微細形態、および前頭側頭型認知症原因分子変異体の脳表現型の形態についても、遺伝学的手法を用いた解析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
yata変異体幼虫運動ニューロンの解析、yata変異体微細形態、前頭側頭型認知症原因分子変異体の脳形態、のいずれについても、計画通りの解析が順調に進んでいる。特に、運動ニューロンの系については、予想外の興味深い遺伝学的相互作用を見出すことに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
yata変異体微細形態、前頭側頭型認知症原因分子の脳形態については、今後も遺伝学的解析を進めていく。運動ニューロンの系において観察された予想外の遺伝学的相互作用については、他の分子の関与が示唆されるため、今後はいかなる分子がいかなるメカニズムでアルツハイマー病原因分子APPの分子機能に関与しているのかを、遺伝学的手法を用いて明らかにしていくことを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に使う消耗品を節約して使用した結果、予想よりも使用額が少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度に得られた予想外の結果について、次年度にさらに解析を進めていくため、そのための実験のための消耗品費として使用する。
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