平成28年度は、昨年度に提案した研究の推進方策にしたがって、より自然なかたちでインタラクションする二者の神経システムの一端を解明するデータ解析を中心におこなった。今まで我々は実験デザイン上の時間的制約を緩めることがより自然なかたちのインタラクションになるというふうに考えてきたが、自然なインタラクションはそれのみではないことに気づき、昨年から研究の方向性を修正した。我々がおこなった特徴と空間それぞれに注意を向ける共同注意課題では、特徴次元または空間位置の選択は完全に被験者に任されており、その後の一連のやりとりも二者の簡単な会話により成立するものであった。そこに実験者は一切介入しておらず、これまでの実験より一歩自然なかたちに近づいている。一方で予備実験により実際に時間制約をなくした課題設計はかなり難しいことも判明したため、今年度は最終年度であることもあり、このデータの脳活動同期解析に注力した。従来我々が用いてきた二者の関係性を見る脳活動の同期解析の結果、実際のペアでは非ペアと比較し、課題遂行中に課題関連の脳活動を除いた残差脳活動において、右下前頭回、右側頭頭頂接合部、右上側頭溝、内側前頭前野の脳活動の同期の増強が見られることが明らかとなった。さらに二人の脳活動データを1つの動的システムとして捉える解析法についても協力研究者と協同して引き続き開発をおこなっており、残念ながらまだ完成に至っていないが、この解析手法を一部のデータに適用し、その有用性が確認できるところまではきている。上記特徴と空間それぞれに注意を向ける共同注意研究の一連の成果は、国際学会であるOHBM2016年次総会、第31回国際心理学会議(第80回日本心理学会合同開催)、Society for Neuroscience 2016で発表し、H26年度に行った言語を用いた共同注意実験の成果と共に現在論文作成中である。
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