研究課題
身体内部環境の受容によってもたらされる内受容感覚は、人間の感情経験のメカニズムを解き明かすための鍵となる概念であることが示唆され、その神経基盤として島皮質の重要性がクローズアップされてきた。その一方で、島皮質は、記憶などの認知機能への関与も指摘されているが、これらの認知機能をどのように支えているのか、また感情を支えるメカニズムとどのような関係性にあるのかという点については、ほとんど検討されていない。本研究では、内受容感覚の鋭敏さ、種々の認知機能のパフォーマンス、感情認識能力、これらを支える神経基盤について検証し、記憶や推論といった認知機能の成り立ちを心・脳・身体の総体として理解し、感情経験のメカニズムとの相違性を検討する。初年度は、健常成人(若年・壮年・老年)を対象として、内受容感覚の鋭敏さが記憶やメタ認知・推論などの判断に及ぼす影響を検討するための課題の調整とデータの収集を行う予定としていた。この前提として、内受容感覚が感情や認知機能に及ぼす影響に関して行われている研究の現状を概括し、レビュー論文を執筆した。また上記の実験を行うための機器および課題・環境の調整などを行い、次年度よりデータの収集を行うための準備を整えた。また、当初3年度目に予定をしていた局所脳損傷例を対象とした神経心理研究を開始した。
2: おおむね順調に進展している
研究代表者の所属機関に移動が生じたため、当初の予定よりも研究開始に要する準備期間が長くなった。しかし、一方で、3年度目に予定していた研究を前倒して実施するなど、全体としておおむね順調に進展していると考えられる。
健常成人(若年・壮年・老年)を対象として、内受容感覚の鋭敏さが記憶やメタ認知・推論などの判断に及ぼす影響を検討するための課題を実施し、データの収集を行う。また神経心理学研究も引き続き遂行し、両方のデータがある程度揃った時点で、包括的な解析を実施する。
研究代表者の移動に伴い、研究実施計画に変更が生じたため。また、平成26年度中に発注した自律神経機能測定装置が年度内に納入されず、支払が翌年度に繰り越されたたため。
自律神経機能測定装置が納入され次第、支払を行う。また、平成26年度に実施予定であった研究計画を平成27年度、平成28年度に分散して実施し、そのための経費として使用する。
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