研究課題/領域番号 |
26350992
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
田村 了以 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (60227296)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 学習・記憶 / 霊長類 / 海馬 / 中隔核 / ニューロン活動 / 場所細胞 / 脳波 / 周期性徐波 |
研究実績の概要 |
本研究では、霊長類海馬における情報の符号化と読み出しの神経基盤を明かにするため、サルが場所行動課題を遂行中または睡眠中に内側中隔核や海馬CA1領域から神経活動を記録し、①周期性活動を示すニューロンの有無、および、海馬脳波徐波成分とCA1ニューロン活動との関連性性を検討した。今年度(平成26年度)には、1頭のサルを用い、実験室内に設置した直線走路の往復移動(場所行動課題)を訓練した。この訓練を十分に行なった後、サルを麻酔し、ヘッドホルダを頭蓋骨に取り付けた。この手術から回復期間(約2週間)をおき、刺激電極を貫通路に、記録電極を歯状回に刺入した。記録電極を200 μmステップ深部方向へ移動して誘発電位を記録した。この操作を冠状面内で数トラック繰り返すことにより、海馬の亜領域の脳定位座標を正確に同定した。この誘発電位マッピングデータに基づき歯状回門部に刺激電極を、中隔核に記録電極を刺入した。中隔核における誘発電位(電場電位とユニット活動)を手がかりに内側中隔核の位置を推定後、推定した脳定位座標に可動式テトロードを慢性埋め込みした。また、歯状回の刺激電極を抜去後、海馬CA1と推定される脳定位座標にも可動式テトロードを慢性埋め込みした。これら慢性埋め込み手術からの回復期間(約1週間)を置き、サルに場所行動課題を行なわせ、ニューロン活動記録を試みた。現在までのところ、サルの行動上の問題が出現し(下記「現在までの達成度」を参照)十分な数のニューロンから活動を記録できていないが、海馬CA1にはサルの居場所に選択的に応答するニューロン(場所細胞)の存在が確認された。しかし、内側中隔核、海馬ともに、課題遂行時に明瞭な周期性活動を生じるニューロンの存在は認められなかった。これらの結果より、霊長類海馬における場所情報の符号化には周期性徐波(いわゆるシータ波)は寄与していない可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
覚醒行動下の記録に際して、サルが強く頭を振ると、事前に(麻酔下で)記録できることを確認していたニューロンの活動が完全に消失してしまう(記録しているニューロンと電極先端の位置関係が変化してしまうためと思われる)。本年度は、この頭部を振る行動が高頻度に出現し、安定したニューロン活動を記録できず、その原因究明にほとんどの時間を費やすことになった。そのため、サルが場所行動課題を遂行しているときの神経活動記録が十分ではなく、また、睡眠時の活動記録実験もほとんどできていない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度(平成26年度)、上記のサルが頭部を振る行動が高頻度に生じる原因をかなり特定でき、その頻度を減少させることが可能になってきた。しかし、まだ改善の余地があるため、今後はまず、その改善に注力する。その後、今年度以降の研究計画、すなわち、歩行移動時の海馬脳波と中隔核ニューロン活動の記録および夜間睡眠時の神経活動記録を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
覚醒下でのサルの頭振り行動のため、予定より記録実験が遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、平成26年度の遅れを取り戻すことに加えて当初の計画も施行する予定であり、それに伴う費用の増加分に次年度使用額を当てる。
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