研究課題
本研究は、サルが場所移動課題を遂行中または睡眠中に内側中隔核や海馬CA1領域から神経活動を記録し、① 周期性活動を示すニューロンの有無、および、海馬脳波徐波成分とCA1ニューロン活動との関連性を検討し、霊長類海馬における情報の符号化と読み出しの神経基盤を明かにすることを目的としている。今年度(平成27年度)の前半は、昨年度に引き続き1頭のサルを用い、実験室内に設置した直線走路の往復移動(場所移動課題)を訓練した後、誘発電位法により海馬の亜領域の脳定位座標を正確に同定し、この脳定位座標に可動式テトロードを慢性埋め込みした。これら慢性埋め込み手術からの回復期間(約1週間)をおき行動下での記録実験を開始し、サルが場所移動課題を遂行しているときにCA1ニューロン活動を記録した。昨年度はサルの行動上の問題により十分な数のニューロンから活動を記録できていなかったが、今年度はこの問題にかなりの改善が見られ、記録実験期間が短かったにもかかわらず(これは下記の通り,われわれが実験している研究棟の耐震改修工事のため行動実験のできる期間が約半年間に限られたためである)、記録ニューロン数は倍増した。その結果、現在記録されている海馬CA1 ニューロンに関しては、①サルの居場所に選択的に応答するニューロン(場所細胞)は存在するが、その割合はラット背側海馬CA1ほど多くないこと、②符号化している場所の面積(直線走路の総面積に対する場所フィールドの面積)がラット背側海馬CA1の場所細胞より広いこと、③ニューロン活動に明確な周期性は認められないことなどが明かとなった。また、今年度後半は、サルの覚醒行動下や睡眠状態での実験できないため、主として誘発電位記録による内側中隔核の位置同定法の開発に注力してきたが、現時点ではまだその確立までには至っていない。
4: 遅れている
平成27年度に本学医学部研究棟の耐震改修工事があり、騒音等のため9月以降の行動実験がほとんどできず、睡眠時の神経活動記録を含め行動下で行なう必要のある実験が遅れた。
平成27年度いっぱいで耐震改修工事は終わり、平成28年度からは行動下で行なう必要のある実験を支障なく進めることができる。また、平成27年度後半は中隔核の位置同定法の確立に向けた基礎実験をかなり進めることができたので、今後はこれまでの遅れを取り戻すべく、行動下での神経活動記録実験に注力する。
医学部研究棟の耐震改修工事のため、行動下の神経活動記録実験が当初の予定通りには進まず、そのため実験補助費(人件費・謝金)の支出が特に少なくなった。
今年度は、記録実験の進行を速めるために、昨年度の当初予定額に達しなかった差額を主として人件費・謝金の支出にまわす。
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http://www.med.u-toyama.ac.jp/ins/index-j.html