本研究は、当初フィリピンのダバオ市のサマ(バジャウ)移民を事例に、都市経済への参加浸透とペンテコステ派キリスト教の受容が同時期に進行したことに注目し、人びとが信仰と仕事という2軸のもとにいかに社会生活を再生産しているのか明らかにしようとした。しかし、まさにプロジェクト開始年度4月に調査地が火災で全焼したため、その枠組みを大きく変更し、つぎのことを追究した。1)火災後の復興プロセス(調査地再建、生業と信仰)、2)火災以前に収集した口述生活史を住民とともに振り返ること。その結果、これらのサマ移民の暮らしは「マイノリティとして承認されていく」社会的過程としてみなすことが可能であるという仮説に達した。
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