研究課題/領域番号 |
26360002
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
澤江 史子 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (70436666)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ポスト・イスラム主義 / ポスト世俗主義 / トルコ / 公正と発展党 |
研究実績の概要 |
本年度は、当初の予定通り、公正と発展党政権が、シリア内戦のトルコへの波及問題と自国内の左派クルド・ゲリラ問題の交わる点について、どのような国際的言説・認識構造におかれているのかに力点をおいた調査を行った。ただし、トルコでは一昨年来の大規模自爆事件の頻発が継続し、7月には未遂に終わったもの多数の犠牲者を出すクーデタが発生し、内政が大きく混乱している。また、シリア情勢と関わりながらクルド左派勢力への弾圧も強まり、メディアや学術界における言論や思想の自由が大きく制限される状況に陥っている。そのため、今後の研究活動の自由の確保と調査対象者が調査を通じた研究代表者との接触によって権利侵害などの不利益を被る可能性も考慮し、現地調査は最低限の範囲に限定した。そのため、本年度の研究は、そうした限定的な現地調査の成果に加え、日本で入手できる資料や過去の現地調査結果などを利用し、そのような最新状況について全体的な見取り図の提示と、今年度のそもそもの研究テーマだった国際的言説・認識構図がこういった最新の状況とどのようにかかわっているのかについても考察を行った。その成果は論文「エルドアン政権「強権化」の構図」として発表された。また、現在のトルコ政府や多くの国民がシリア内戦やクルド問題、さらには難民問題をどのような観点から認識しているのかについて、より長期的な国際政治の歴史的背景に位置付けた論考についても、近刊予定の書籍(共著)にて発表される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は前述の通り、トルコのおける大きな政治変動とそれに伴う政治的引き締めの強化が起きている。それが内政不安による一時的なものにとどまるのか、これをきっかけにして非民主化として制度化されて長期的に固定されてしまうのかは、本研究のキーワードであるポスト世俗(主義)とポスト・イスラーム主義をトルコについてどのように評価するのかに関わる根本的な問題となっている。また、政権に批判的な立場の人物や組織に対する現地調査に慎重にならざるを得ないため、当初の調査計画を十全に実施できたと言い難い状況にある。ただし、これまでの研究蓄積に基づいた成果の発表はできているため、やや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
前述の通り、トルコ情勢が流動的であり、その行方が本研究における分析作業と直接的にかかわっているため、本年はトルコの最新情勢を可能な限り現地調査も行いながら実施するとともに、短期的視点に陥らないために、さらには本年は本研究の総括の年でもあることから、研究の主要事例である公正と発展党の歴史を全体として考えなおすという作業を中心にしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に実施したトルコ現地調査(3月31日帰国)において現地で購入した図書資料購入代金とその日本への郵送代金が計76245円支出されているが、帰国後の清算手続きが2016年度予算からは間に合わず、2017年度予算からの支出となった。そのため、実質的には2016年予算からは61371円分の支出超過となっているが、年度末収支状況としては予算残額が発生したように見えている。
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次年度使用額の使用計画 |
上述の通り、実質的には支出超過となっており、不足金額については2017年度予算より支出の予定となっている。
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