研究課題/領域番号 |
26360008
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
坂部 晶子 名古屋大学, 国際開発研究科, 准教授 (60433372)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | フルンボイル / エヴェンキ族自治旗 / 民族集住 / 民族文化 / 南屯 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、中国内モンゴル自治区フルンボイルの多民族集住地域において、社会主義中国の「制度化された多民族性」の時代を生きてきた少数民族自身の生活世界を再構成することで、彼らの対立や葛藤をも含めた民族的な共同性を描き出すことにある。この目的にそって今年度行った具体的調査・研究の概要は以下のとおりである。 第一に、中国の現地フィールドおよび北京における資料収集である。中国全体で流通する新しい民族研究の成果を、中央民族大学の書店および北京の書店にて収集し、さらに、現地のフィールド先で、個別に当該地域における出版物の収集に努めた。 第二に、フルンボイルの中心、ハイラル区の南隣のエヴェンキ族自治旗の中心地、南屯において、主としてエヴェンキ族の若者を対象にインタビュー調査を行った。彼らの生活状況、ライフヒストリーを中心に、民族意識や現在の民族文化保護にたいする見解について聞き取りを行った。さらに、漢族の映像研究者(兼映像作家)、ブリヤート族の俳優へのインタビュー調査も行った。 さらに、現地の民族集住状況を知るために、当該地の歴史、文化にかかわる施設での現地調査を行っている。モンゴル国との国境近く新巴爾虎左旗にある諾門汗戦争記念館、南屯内の仏教寺院、郊外の民族観光施設などへの参観、関係者への聞き取り調査も行った。また主として南屯で活動する「伊敏河民族音楽団」での聞き取り調査、リハーサルへの参与観察等を行った。 これらの調査・研究の成果は、下記の研究報告に一部反映されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の進捗状況についておおむね順調に進展していると考える理由は、以下のとおりである。 本研究課題が想定している具体的作業課題は、以下の三つの段階に分けられる。第一段階は各民族の通時的資料の収集と分析、第二段階では、各民族の生業の変化と、都市―農村(牧区、林区)との生活の相違にかんするフィールドワーク、第三段階では、各年齢層の人びとへのライフヒストリーの聞き取り調査を想定している。これらの三つの段階は、それぞれ個別に並行して行うことが可能であり、第一段階、第三段階はすでに、初年度必要な資料や調査対象数を確保している。第二段階については、今年度は、フィールドワークの予備的現地調査を行っており、それぞれの段階で順調に進捗していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
上記「現在までの達成度」で記した、本研究課題の三段階について、今後もそれぞれ個別に進めていく予定である。 第一段階の各民族の通時的資料の収集と分析、第三段階の、各年齢層の人びとへのライフヒストリーの聞きとり調査については、昨年もほぼ順調に進んでおり、今後も引き続き、現地調査のなかで資料収集と聞きとりデータの収集を進めていく。 第二段階の、各民族の生業の変化と、都市―農村(牧区、林区)との生活の相違にかんするフィールドワークについては、すでに予備的調査はすましており、今後は、現在想定している具体的な対象地域(牧区、農区など)との連絡・調整を行い、実質的な参与観察とインタビュー調査を含めたフィールドワークを実施していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
主として聞きとりデータのテープ起こし謝金と、現地調査での自動車チャーター代が少なかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
自動車チャーター代については、本年度の調査でより多くの地点を回る可能性が高く、そこでの使用を予定している。テープ起こしについても、本年度の調査データとあわせて、アルバイト雇用のなかで使用する予定である。
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