研究課題/領域番号 |
26360009
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
金子 守恵 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 助教 (10402752)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アフリカ / 実践知 / 創造 / 土器 / 身体技法 |
研究実績の概要 |
この研究は、エチオピア西南部を主な調査地として土器をめぐる創造的実践知の生成とマテリアリティの変成をあきらかにすることをめざし、創造的実践知によって生成された土器の3つの特色(1.観光化、2.工業化、3.非宗教化)にそって、平成26年から4年間にわたって研究にとりくむ。 次年度(27年度)は、「観光化」というキーワードを手がかりにして、調査地の近隣地域にくらす住民とその地域にある研究機関が連携して、在来のバショウ科植物(エンセーテ)を利用した観光化の試みについて比較の観点から広域的な調査をおこなった。「工業化」というキーワードについては、昨年度に引き続き、植物繊維をつかった土産物の製作を教授する場面にたちあうことができた。その際、メンバー間で知識や技法を共有する場面についても予備的な観察をすることができた。 これらに加えて、成果の一部を、国際エチオピア学会(平成27年8月24-28日、於ワルシャワ)で発表し、エチオピアにおける技法や知識の生成や編成という問題に関して、学術的な交流をおこなうことができた。また、マレーシア大学サバ校において成果の一部を発表し(平成28年3月21日)、アジアとの比較のなかでアフリカの実践的な知の有り様について学術的な交流をおこなうことができ、アフリカでの研究成果を東南アジアにおいて発信する貴重な機会をえられた。さらに、徳島県つるぎ町において、在来の植物資源に関する知識や技法の実践に関する展示を企画・開催するなど(平成27年12月6-12日)、研究成果の一部を社会に還元する活動にも従事した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次年度の調査研究における大きな達成点としては、昨年度対象とするモノやコンタクトしていく人を確定できたことによって、継続的な調査観察が可能になったことである。昨年度から調査の拠点を、調査地域に設立された植物園とそこでおこなわれている植物繊維をつかったワークショップへと変更したことにより、ワークショップに参加するメンバー間の知識や技法の共有に関わる調査を実施した。また、継続的な調査によって、博物館の土産物ショップにおける販売実績などもあきらかになり、この実績によって、ワークショップに参加するメンバー間における利益の分配方法や、実績に応じた製作活動の変化なども記録することが可能になった。これらに加えて、地域内の資源をもとに観光化や植物資源の保全にとりくむ近隣地域の人々の活動の様子を広域的に調査できたので、エチオピア南部という空間的な広がりのなかで調査地域の観光化や人々による創造的な実践活動について検討することが可能になった。 一方、次年度は、国際エチオピア学会やマレーシア大学で研究成果を発表する機会をえることができ、より広い文脈において、調査対象やその調査結果を分析、考察する機会に恵まれた。さらに、在来の資源の有効利用という観点から、アフリカの事例と日本の農山村の取り組みを比較検討する展示の企画・準備に従事することができ、アフリカでの取り組みをさらに相対化することができた。以上のことから、次年度もおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進の方策については、大きく以下の3点を念頭においている。ひとつめは、マテリアリティの変成を描きだすためのキーワードのひとつである「非宗教化」に関わる調査にとりくむ。具体的には、土器や職人の製作活動との関連性に留意しながら、占いに関わる場面と職人たちの生計活動としての土器製作について、その社会的意味や職人たちの宗教的な実践との関係性について検討する。 これに加えて、「観光化」というキーワードについては、15年前に調査したデータとの比較検討のために、引き続き土器製作に関する基礎データを収集する。とくに、土産物としての土器製作とその際に実践されている身体技法に注目して調査をおこなう。さらに、植物素材を利用した土産物製作の技法や知識において、観光客が好んで購入する土産物を製作するための基準と、ワークショップに参加するメンバーが結果として共有する土産物製作の基準との齟齬と、そういった齟齬を生成させる技法や認識的な枠組みの違いについても検討する。 最後に、3年度目も学術的な交流を活発におこなう予定である。今年度は、5月に開催される国際人類民族科学連合中間会議に参加発表を予定している。初年度、次年度に引き続き、研究成果を日本の教育機関において展示を介して発信していく予定である。
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