研究課題/領域番号 |
26360010
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤川 隆男 大阪大学, 文学研究科, 教授 (70199305)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | オーストラリア / 歴史博物館 / 海事博物館 / キャンベラ / ピゴット報告書 / 歴史意識 / 地方史 / ナショナル・トラスト |
研究実績の概要 |
今年度の研究計画は、主に以下の3項目を実施する予定であった。(1)キャンベラの国立文書館において、『ピゴット報告書』の調査資料の分析を行う。調査には、現在も協力を受けているニコラス・ブラウン准教授の助力を得る。またニューサウスウェールズやヴィクトリアの州立図書館で、州政府の博物館政策、州別報告書類、統計、歴史協会・ナショナル・トラスト、地方自治体などに関する文献を収集する。(2)資料に基づいて州グループの作業仮説を検証し、研究計画の修正を行う。(3)包括的類型を暫定的に作成し、翌年度の調査に備える。しかしながら、家族の急な病気もあり、(1)の調査の短縮する必要が生じた。それを補い、研究を進展させるために、『ピゴット報告書』のもとになった委任調査官によるすべての資料を現地で写真に収め、帰国後、日本でそこに現れるすべての地方博物館を確認し、リスト化した。それらはニューサウスウェールズ、クィーンズランド、ヴィクトリア、南オーストラリアに及ぶ。そのうえで可能な限り、リストの対象となった博物館の現状と歴史的変遷を調べ、地方の歴史博物館の全般的な歴史的推移の把握に努めた。また、統計局の全博物館の調査に加えて、その見本となったヴィクトリア州における歴史博物館の調査資料を入手し、歴史的な変遷の具体的な把握に努めた。さらにナショナル・トラストや歴史協会の個別の歴史に関連する文献も入手した。こうした予備調査によって、州別に時間的な差異はあっても、大きな違いは見いだせなかったので、地域の類型による仮説は放棄し、全国的な歴史的推移のモデルを作ることを目ざして、今後の研究を進めることに決めた。これに加えてシドニーでは海洋博物館を調査した。以上を踏まえて、包括的類型よりは、今後の研究対象となる博物館のリストとその包括的なデータベース化を行うことで、27年度の研究に備えることにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オーストラリアの博物館の調査という点では研究に遅れが生じているが、それを補うために行った文献調査と基礎的データの整理は予定以上に進展した。研究の進展により仮説の一部が誤っていることを確認したが、これは予想の範囲内であり、この確認によって新たな前提に基づいて、海外調査を含む27年度の研究計画を実施できる段階に達している。これは新たな事実の確認による研究の修正であり、研究計画はおおむね予定通り、順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
27年度の計画は以下のとおりである。 (1)文献調査の進展が予想以上であるので、今年度はニューサウスウェールズ、ヴィクトリア、南オーストラリアの地方博物館の調査を、予定地域を大幅に拡大して広く進める。 (2)キャンベラの国立図書館において、ガンダガイの地方新聞・文献調査を行う。 (3)さらに可能であれば、つまり相手方との調整がつけば、翌年度に予定している国際セミナーを前倒しで開催したい。 (4)以上を踏まえると同時に。調査の結果に基づいて、翌年度の研究計画を適宜修正する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度使用額が予定額を下回った最大の要因は、夏期に予定していた調査の期間を大幅に短縮せざるをえなくなったことである。研究計画は文献研究を進めることで補ったが、滞在期間が計画より約3週間短くなったために、滞在費だけでも60万円程度、それにこの間の国内旅費(主にレンタカー費用)を加えた79万円あまりが未消化になった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、未消化となった昨年の調査を、今年度分とあわせて実施するために繰り越し金額の79万円あまりは使う予定である。また、可能であれば、国際セミナーを前倒しで実施すことを考えている。
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