研究課題
本研究では、ジャマイカとガイアナでの現地調査、文献、視聴覚資料等をもとに、アジア系混血、特に周辺化され研究対象で軽視されてきた中国系混血のエスニシティに焦点を当てた。中国の改革開放以降、新移民の参入、通過、移出も増え、現地華人個人、家族親族、経済社会、文化、ネットワークにも多種複雑な変化が生じている。新旧移民に関連する中華会館、致公堂、キリスト教会、墓地、商活動地、博物館、古文書館、孔子学院等の訪問、観察、関係当事者への聴き取りで、日本では入手不能な一次資料が収集できた。再(再)移住し、主に英国、米国、カナダを含む複数地域・国家をまたぐトランスナショナル・ネットワーク形成も活性化、種々の帰還を含め移動の動態も、多国籍越境家族、通婚と混血化もその複雑さを増している。英国ロンドン、バーミンガム、カナダのトロントでもカリブ系、中国系が交差する複層的ディアスポラの動向調査、訪問・聴き取りも行なった。ジャマイカとガイアナの人種・民族構成の差異は、中国人・系の通婚や非婚家族編成に影響を与えてきたが、インド系ほど通婚や混血への忌避はなく、多様な位相がみられる。両国とも中国系は0.2%程度で在外者が多く、一定期間居住した新移民は再移住後も、通過者としてカリブ文化を部分的かつ非規定的に包摂する場合もある。移動経路は移動先や労働生活、通婚や混血子弟の帰属意識や生活様式をも左右する傾向がある。多重のディアスポラ意識を醸成並存する一方、各々の文化実践には個別の環境、個人や取り巻く人間・社会関係資本と折衝・交渉を重ね展開する非均質的現地化の諸相が見られる。中国系混血クレオールの多くは出自の複数性を認識しつつも、定着先のナショナリティを重視しつつ中国系としての意識をより前面化する傾向がある。自らの多エスニック背景への知識の有無や過多、内実は家族親族関係や生育環境等、複雑な要因で流動的、可変的である。
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Working Paper Series, Department of Anthropology, Sun Yat-sen University
巻: 3 ページ: 1-33