本研究では、インドの経済発展と公正な社会づくりの鍵を握っていると目されつつも、これまでほとんど実証研究の対象となっていなかった「非エリート高等教育機関」の実情について、インド政府が整備・公開中の高等教育機関データベース(All India Survey on Higher Education:AISHE)のデータ分析とフィールド調査を通じて明らかにすることをねらっている。上記の目的に即して、本年度はAISHEのデータ分析の最終結果を学術誌へ投稿し公表した。また、昨年度に引き続く課題であった、デリーとウッタルプラデーシュ州Varanasiにおけるフィールド調査を完了させた。
AISHEのデータ分析の最終結果は、ジェトロ・アジア経済研究所刊行(2017年3月)の査読付き学術誌『アジア経済』で公表した。この論稿では、AISHEデータを使ってインドの高等教育の全体像をまずはラフスケッチし、次いでVaranasi県における1950年代からの高等教育の発展に関するいくつかの特徴を指摘した。この点についての詳細は昨年度の研究実績の概要で述べた通りである。
フィールド調査は、26年度以来継続している、デリーにおける高等教育修了者(他州で大学院を修了した学生)の生活調査とVaranasiにおける若者(高等教育就学者と非就学者)の生活調査である。これらの調査によって、本研究で明らかにすべき高等教育と労働市場の接合の現状を検討するために必要なデータの収集は完了した。本年度の後半は、調査データの整理・分析に取り組んだ。
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