本研究の目的は、海外の遺伝資源を利用した研究のスムーズな遺伝資源入手のための契約雛型の提案である。 そのために、ネパール、インドネシア、ベトナム、タイの生物多様性条約(CBD)・名古屋議定書(NP)及び農業・食料に関する植物遺伝資源に関する国際条約(ITPGRFA)に関連する国内法と遺伝資源を利用する際の手順と提供ポリシーの調査を行った。結果、インドネシアはNPを締結、海外の研究者が遺伝資源アクセスのためのインターネットを介した手順が公開・運用され、提供ポリシーも明確であることが確認できた。ベトナムにおいては、遺伝資源アクセスに関する法律・手続きも明らかにした。それ以外の国については、上述の国際条約の締結や国内法の整備に関する新しい動きはなかった。 その状況で、ベトナム4件、インドネシア1件、ネパール2件の実証試験からMTA締結を試みた。MTA案は、欧米で基本としているSLAを元に、非金銭的利益等を明記する形で、さまざまな案を作成し、結果、インドネシアを除くすべての国でMTA案は合意され締結し、遺伝資源の入手を可能にした。これらの事例でのMTA雛型を用いて、対象国以外の国(モンゴル、マレーシア、フィジー、カンボジア)についても締結交渉を行い、他国でも本MTA案は合意できることを確認した。 対象国においては、インドネシア以外は共同研究契約なしに入手が可能であったため、共同研究契約の雛型提案まで達しなかった。しかし、了解覚書(MOU)の締結により、よりスムーズな遺伝資源入手交渉が可能であることが幾つかの国での交渉で明らかになり、ベトナム2研究機関を対象にMOUの締結交渉を行い、締結した。このMOU締結でMOUのモデル化のための資料となった。 結果、それぞれの国の国際法関連国内法と提供ポリシーを確認し、入手手順の明確化とこれらに配慮したMTA雛型化は達成された。
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