研究課題
本年度は、1.康仁徳・元韓国統一部長官に対するオーラルヒストリー実施とその記録化作業、2.崔書勉・国際韓国研究院院長に対するオーラルヒストリー実施とその記録化作業を、それぞれ連携研究者、研究協力者と共に取り組んだ。康仁徳氏へのオーラルヒストリーは平成27年8月にソウルで、崔書勉氏へのオーラルヒストリーは平成27年7月と12月にいずれも東京で、それぞれ集中的に実施した。昨年度に引き続き、両氏とも日韓関係に深くかかわってきた要職にあったものだけが知るファクトを多く証言し、ひとまずの締め括りができた。康仁徳氏に対しては1998年から現在までの事象をとした。金大中政権下での最初の統一部長官として取り組んだ対北朝鮮政策、退任後の各政権下の南北朝鮮関係の見方などについて聞くことができた。「太陽政策」という呼称にこだわる金大中と、これに否定的だった康仁徳氏の間で緊張関係があったことなどが浮き彫りとなった。いっぽう、崔書勉氏に対しては1979年から現在までの事象を対象とした。朴正煕大統領の死と、その後の韓国社会と日韓関係の展開に関して話を聞いた。朴正煕の死で、日本の政界がこれまでのパイプが断絶することを懸念した点、娘の朴槿恵(現大統領)が疎外されていった点、全斗煥政権が朝鮮大学校(東京)に対抗して韓国大学校を日本に作ろうとしていたという証言が得られた。昨年度に引き続き、両氏のオーラルヒストリーの記録化、つまり「録音起こし」の作業も行った。正確さが求められるため、高度な技術とある程度の知識だけでなく、守秘義務を果たせる信頼性の高い業者へ依頼した。ここから話者の了解を得ながらの校閲作業を行っているが、まだ公開できる段階ではない。公開ができる段階になれば、公共性の高い研究となるものと期待できる。
2: おおむね順調に進展している
康仁徳・元韓国統一部長官と崔書勉・国際韓国研究院院長に対するオーラルヒストリー実施は計画通りに実施でき(康仁徳氏は8月のまる3日分、崔書勉氏は7月と12月のまる2日分)、ひとまずの締め括りをすることができた。その記録化作業も順調に進展している。予想以上に録音分量も増えたため、話者側の記録草稿チェックを含めて、記録化作業は完成の段階までには新年度の1年間は時間を要するであろう。
平成28年度は、平成26~27年度に実施し、ひとまず締め括った康仁徳・元韓国統一部長官と崔書勉・国際韓国研究院院長の証言に対する記録化作業を本格化させなければならない。関係資料の収集も実施する予定である。9月までに録音起こし速記作業と証言の検証作業と、2月までに録音起こし原稿完成---というスケジュールを組んでいる。年度内にその記録の冊子化を実現させたいと思っている。その過程で、代表者、連携研究者、研究協力者との研究会を2度程度実施し、康仁徳氏と崔書勉氏への証言確認作業のために、ソウルへも出張予定である。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 オープンアクセス 1件)
Journal of Contemporary Korean Studies
巻: Vol. 2, No. 2 ページ: 53-84