平成29年度は、1. 崔書勉・国際韓国研究院院長に対するオーラルヒストリー実施とその記録化作業・草稿チェック作業・報告書発行、2.康仁徳・元韓国統一部長官に対するオーラルヒストリー実施とその記録化作業・草稿チェック作業を、連携研究者、研究協力者と共に取り組んだ。 とくに、上記1は『崔書勉(国際韓国研究院院長)オーラルヒストリー記録』(555頁分)として冊子化することができた。「韓国研究の魁」と呼ばれる崔書勉氏(1928年生まれ)は、社会運動(信託統治反対運動や戦災孤児院運営)やカトリックの活動にかかわり、李承晩の政敵である張勉に近かったことから、「亡命者」として日本の地に足を踏むことになった。日本統治時代や李承晩政権下の韓国での活動についても語ってもらったが、この30年に及んだ東京での活動と生活に関しての語りが多くを占める。 崔書勉氏の日本での人脈は政界、学界、経済界など多岐にわたるが、とくに日本の保守政治家がとの関係が目立つ。なかでも、総理となる福田赳夫との関係は特別であり、朴正煕との間もつないだ。崔書勉氏の語りから、日本の保守政治家らが韓国を重視した「時代」を浮き彫りにすることができたほか、60年代から80年代にかけて、日韓両国の政治家や知識人がお互いをどう眺めあってきたがわかる語りも多数得ることができた。 この冊子は主要大学・研究所・国や地方自治体の図書館・資料館、主要メディア、識者へ配布した。広範な研究者等が利用可能となることで、公共性の高い研究となった。
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