研究課題/領域番号 |
26360021
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研究機関 | 北海学園大学 |
研究代表者 |
須田 一弘 北海学園大学, 人文学部, 教授 (00222068)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マレーシア / インドネシア / 人口流動 / 生業 / 国際情報交換 / 資源利用 |
研究実績の概要 |
国家またはグローバル企業による開発により近年急速な経済発展を遂げている東南アジア諸国では、開発の原因及び結果としての人口流動が生じている。こうした人口流動は、地域の資源利用の変容を伴うことが多く、当該地域のみならず、全球的な環境問題を引き起こすことも懸念されている。本研究では、とくにインドネシアとマレーシアを対象に、開発と環境、及び人口流動の相互関係を生態人類学的方法により、解明することを目的とした。そのため、カウンターパートであるインドネシア・パジャジャラン大学生態学研究所のブディ・グナワン上級講師と、マレーシア・スルタン・ザイナル・アビディン大学のラムリー・ビン・アブドラ教授と密接な連絡を取りながら、両国での調査研究計画を具体化した。また、東京大学大学院医学系研究科国際保健学専攻人類生態学教室の梅崎昌裕准教授に研究協力者として、本研究に参加していただき、情報収集や研究の枠組みの具体化をおこなった。8月上旬にはマレーシアトレンガヌ州を訪れ、ゴンバライ村に赴き、村長らと面談し、2016年の調査についてその協力を依頼した。さらに、下旬からは研究協力者の梅崎准教授とともにインドネシアを訪問し、西ジャワ州スメダン県ランチャカロン郡の二つの集落(ルバクトラン村とチパリア村)で住み込み調査を行った。調査では、パジャジャラン大学の大学院生に協力を仰ぎながら、両集落の全世帯について、家族構成、所有する農地面積及び家畜数、生産量などに関するセンサス調査を行い、また、稲作及びサツマイモ耕作、樹木栽培、丁子採集、サトウヤシ栽培及び加工などについての聞き取り調査及び直接観察を行った。その結果、所有する農地や生産量及び収入には著しい変異があること、また、両集落とも農村ではあるが、内職や屋台による食糧販売などのインフォーマルセクターに関わって生計を維持している世帯が多数存在することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、インドネシアとマレーシアを対象に、開発と環境、及び人口流動の相互関係を生態人類学的方法により、解明することをおおきな目的とした。そのため、1)開 発フロンティアにおける人口流動の実態解明、2)人口流出地域における資源利用と環境の相互作用の事例収集、3)事例整理に基づく人間生態系の分類と評価、の三つを具体的な目標とした。2014年度の研究では、このうち、2)のための調査を行った。具体的な調査方法は、生態人類学で用いられる、フィールドワークによる生業活動・資源利用・ライフヒストリー等に関する定量的・定性的データ収集が主である。これらを関連他分野の研究方法を参考にしながら、国内外の人口流動によって生じた地域環境への影響と、地域環 境変動によって生じた人口流動の双方を動的に分析し、人口流動と環境との関係を明らかにすることである。2014年度に行ったインドネシアにおける現地調査は、2015年度以降の調査研究の基盤となるものであり、研究の目的や研究計画との関連から、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27 年度は、東京大学大学院医学系研究科国際保健学専攻人類生態学教室梅崎昌裕准教授に引き続き研究協力者となっていただき、インドネシア西ジャワ州スメダン県ランチャカロン郡の二つの集落(ロバクトラン村とチパリア村)において、集約的現地調査を予定である。また、2016年度には、インドネシアでの調査に加え、マレーシアトレンガヌ州ゴンバライ村でも集約的な調査を行う予定である。これらの調査で収集したデータをもとに、事例整理に基づく人間生態系の分類と評価をおこないたい。さらに、その結果に基づき、人口流動の多様性と環境の関わりを解紐するための手がかりとしたい。
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