研究課題/領域番号 |
26360021
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研究機関 | 北海学園大学 |
研究代表者 |
須田 一弘 北海学園大学, 人文学部, 教授 (00222068)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | インドネシア / マレーシア / 資源利用 / 生業 / 人口流動 / 国際情報交換 / 開発 / 環境 |
研究実績の概要 |
インドネシアの調査では、ルバクトラン集落で現地調査を行った。調査地では、水田耕作・常畑・養魚・樹木栽培(タロン)の4つを組み合わせたスンダ地域の伝統的な生産複合による農業がおこなわれていた。水田耕作においては、近年、稲作とサツマイモ栽培の二毛作が行われるようになり、水田の収穫後は、水を抜いて畝を作り、サツマイモの栽培を行うという、世界的にもきわめてまれな耕作方法がとられていた。サツマイモの品種は、この地方に独特の甘みの強いものが栽培され、地域の特産物になっている。水田で耕作される稲の品種の多くは国際稲作研究所で開発された、高い生産性を有するIRRI米が中心であった。また、昨年度に行ったセンサス調査の確認と改訂を行い、さらに、稲作及びサツマイモ耕作、樹木栽培、丁子採集、サトウヤシ栽培及び加工などについての聞き取り調査及び直接観察を行った。その結果、農業を主たる生業とする世帯では、換金作物であるサツマイモと、主食である米の栽培について、選好に差異があることがわかった。これには、耕地の水はけ等の微小環境、所有する耕地面積、サツマイモの価格の変動など、多様な要因が影響している。また、連作障害を避けるため、サツマイモの耕作は連続して5回までに抑えなければならないこともわかった。さらに、かつてトランスミグラシ(国内移住)政策のもと、スマトラ島南部へ移住していたが、20数年後に移住先から調査対象集落に再移住してきたものが3世帯あることがわかり、トランスミグラシ政策へ応募した動機、スマトラ島南部での生業と生活、トランスミグラシ政策から離脱した理由などについて聞き取りを行った。 マレーシアにおいては、昨年同様、トレンガヌ州ゴンバライ村に赴き村長らと面談し、2016年の調査についてその協力を依頼した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、インドネシアとマレーシアを対象に、開発と環境、及び人口流動の相互関係を生態人類学的方法により解明することを大きな目的とした。そのため、1)開発フロンティアにおける人口流動の実態解明、2)人口流出地域における資源利用と環境の相互作用の事例収集、3)事例整理に基づく人間生態系の分類と評価、の三つを具体的な目標とした。2015年度の研究では、このうち1)と2)のための現地調査を行なった。具体的な調査方法は、生態人類学で用いられるフィールドワークによる生業活動・資源利用・ライフヒストリー等に関する定量的・定性的データ収集が主である。これらを関連他分野の研究方法を参考にしながら、国内外の人口流動によって生じた地域環境への影響と、地域環境変動によって生じた人口流動の双方を動的に分析し、人口流動と環境との関係を明らかにすることを目標としてきた。 2015年度に行なったインドネシアにおける現地調査では、2014年度の現地調査の結果に新たなデータや知見と、修正を加えることが可能となった。また、2016年度の現地調査の実施にかかわる諸手続きも完了することができた。さらに、マレーシアでは、調査地であるトレンガヌ州ゴンバライ村で現地調査を行ない、村長を含む地元有力者に2016年度の現地調査に対し、引き続き協力していただけることを確認してきた。これらのことを考えると、本研究は、研究の目的や研究計画との関連から、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2016年度は、インドネシアパジャジャラン大学生態学研究所及び、マレーシアスルタンザイナルアビディン大学の研究者との連携のもとに現地調査を行なう予定である。具体的には、インドネシア西ジャワ州スメダン県ランチャカロン郡の二つの集落(ルバクトラン村とチパリア村)において集約的現地調査を行なう。また、マレーシアでは、トレンガヌ州ゴンバライ村での人口流動に関する集約的な現地調査を行なう。さらに、開発フロンティアに囲まれている先住民(オランアスリ)の集落の資源利用の変化について、現地にて長期調査の経験のある千葉大学文学研究科研究員の河合文氏に研究協力者になっていただき、クランタン州の先住民居住地での現地調査を行ないたい。 最終年度である2016年度には、これまでの調査で収集したデータをもとに、事例整理に基づく人間生態系の分類と評価を行ない、人口流動の多様性と環境の関わりを解紐することを目指したい。
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