今年度は、マレーシアにおいては、昨年同様、トレンガヌ州ゴンバライ村に赴き、人口移動に関するデータを収集した。また、インドネシアでは、西ジャワ州スメダン県ランチャカロン郡のルバクトラン村ナガラワンギ集落とランチャカロン村チパリア集落でそれぞれ住み込み調査を行った。 ナガラワンギでは、生業についての聞き取り調査及び直接観察を行った。その結果、農業を主たる生業とする世帯では、換金作物であるサツマイモと、主食である米の栽培について、選好に差異があることがわかった。すなわち、サツマイモ耕作を主目的とする世帯と、米耕作を主目的とする世帯である。これには、耕地の水はけ等の微小環境、所有する耕地面積、サツマイモの価格の変動など、多様な要因が影響している。また、連作障害を避けるため、サツマイモの耕作は連続して5回までに抑えなければならないこともわかった。各世帯の輪作選択と収量に関するデータ収集も行った。 チパリア集落では、輪作選択と収量に関するデータ収集を行った。その結果、以下のことがわかった。水田とサツマイモの輪作はほとんど行われておらず、伝統品種米の二期作が中心であった。その理由としては、チパリアでは狭い棚田での灌漑により水田耕作が行われており、水資源管理が重要な問題となっている。そのため、水田とサツマイモとの輪作をするには、サツマイモ耕作時に水を完全に抜かなくてはならず、そうすると隣接する棚田への水の供給が不可能となり、水田耕作ができなくなってしまう。それを防ぐため、水田では米のみを耕作している。サツマイモは地すべりなどで灌漑による水の供給ができなくなった土地や、棚田の最下部で水供給の調整が可能な場所に限られている。また、サツマイモとの輪作により米の収穫期にずれが生じると、鳥害の被害に見舞われやすくなるため、伝統品種を同時期に栽培し、鳥害のリスクを拡散するという戦略もとられていた。
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