2016年度は最終年度として、研究成果のとりまとめと公表、議論の国際化をめざして、現地での最終調査と国際シンポジウムの開催、論文集の出版などをおこない、課題の達成につとめた。 研究代表者は研究目的に沿って、ひきつづきモンゴル、ロシア、中国の諸文書館、図書館で資料を収集し、「[モンゴル]第5騎兵師団が戦争中に敵から鹵獲した戦利品、情報」などの極秘資料を発見した。また、これまで収集したモンゴル語・ロシア語・中国語・日本語の諸資料を基礎に、総合的に分析をおこない、論文「1945年の日本人のモンゴルへの移送」などを執筆した。 2016年5月には昭和女子大学で国際シンポジウム「日本人のモンゴル抑留とその背景」を開催し、研究代表者を含む、日本、モンゴル、ロシアの研究者6名が研究報告をおこなった。主に第2次世界大戦終結後の日モ関係を中心に、モンゴルに抑留された日本人に焦点をあて、抑留の背景や抑留に至るプロセス、帰還をめぐる国際関係と政治過程などを総合的に分析し、歴史の恩怨を乗り越えた日本とモンゴルの友好関係の経験から得られる知見の発見を中心に検討した。さらに同シンポジウムで報告された6本の論文に、日本、ロシア、韓国の3名の研究者が執筆した論文を加えて、論文集『日本人のモンゴル抑留とその背景』を出版した。 このほか、2016年10月に第3回アジア未来会議(北九州大学)で論文「溥儀のシベリア抑留」を発表した。 これらを通して、日本人抑留者がモンゴルに送られた背景、日々の過酷な労働の実態、引き揚げ、および遺骨収集における両国の交流事業の促進、1972年の外交関係樹立へのつながりなどが明らかになった。
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