2016年度は、過去2年間の研究成果の公表に努めると同時に、ベトナムで新たに発生した環境ガバナンスに関わる問題について調査を継続した。4月には、法政大学との共催で「アジアの市場経済移行国におけるガバナンス─ベトナムとミャンマーの資源・エネルギー開発と生活・文化・環境」と題するセミナーを開催し、学生および一般人を対象に、ベトナムとミャンマーに関する前年度までの調査結果を発表した。 2016年4月、ベトナム中部沿岸で、外国資本の製鉄所からの廃水により海水魚が大量死する事件が発生し、鉱業と環境をめぐるガバナンスの問題が新たに浮上した。そのため、従来の調査対象であるボーキサイト開発現場に加え、中部沿岸地域でも現地調査を実施した。いずれの事例でも、行政による住民生活への配慮や、説明責任が不足している現状が明らかになった。 議論を重ねる中で、先端技術がガバナンスに及ぼす影響と、ガバナンスの科学的検証の2点が課題となった。ベトナムやミャンマーなど、現地調査が容易ではない地域について、客観的なデータの集積をガバナンスに結びつける可能性を追求するため、8月に社会地質学会および情報地質学会との共催で、「ガバナンスを支える技術の実際」と題するワークショップを開催し、講師によるモートセンシングとGISの実習を行った。 11月に日本大学で開催された第26回環境地質学シンポジウムで、ベトナムのボーキサイト開発と海洋汚染問題のこれまでの研究成果、およびガバナンスのモデルとして、モンゴルにおける小規模金採掘についての調査結果を発表し、各分野の専門家との意見交換を行った。
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