研究課題/領域番号 |
26360030
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
松田 正彦 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (60434693)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 農村生業 / 生業複合 / 生計多様化 / 農業システム / 農業集約化 |
研究実績の概要 |
本研究は、農村生業研究の空白地帯であるミャンマーの中央乾燥平原において、恒常的に寡少で不安定な降雨条件(ノーマル・ハザード)に歴史的に長期にわたり直面してきた人びとによって育まれた生業複合体系の全体像を示すことを目的としている。 計画4年目となる2017年度は、ミャンマーでの現地調査を実施した。過年度の現地調査の結果を基にマグウェ郡における調査村(1ヵ村)を選定し、標本世帯に対する聞き取り調査をおこなった。中央乾燥平原の中心部コアに位置する最も乾燥した地域と比べた場合、マグウェ郡の年間降水量は相対的に多く、天水畑作農業によっては比較的有利な生態環境にある。聞き取り調査の結果から、マグウェの調査村では、作目毎の極端な不作は経験しているものの発生頻度は低いことや、農家の家計内における作物生産への経済的な依存度が高いことなどが明らかになった。しかし、世帯平均の収入源数や世帯毎の作目数は同程度であると推測された(ただし生業多様化指数は相対的に低いことが示唆された)。また、化学肥料や農薬の投入や機械化といった農業技術の集約化が進行する一方で、堆厩肥の投入は依然として多いこともわかった。 マグウェの調査村は、生態ハザードのリスクを低減する方向への技術適応(マルチ作目)と高める方向への技術適応(投入資材増)の両者がみてとれる事例といえる。これらの知見は、ミャンマー中央乾燥平原の生業複合体系における、生態ハザードと農村生業の関係についての理論的枠組みの構築の基礎情報となり、同地域の生業システムの地理的変異・歴史的成り立ち・現代的変化の仕組みの解明にとって有用である。また、近年活性化するミャンマー農村開発の実践への学術研究成果の反映の点でも意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミャンマーでの現地調査を実施し、研究対象地域における一次データの蓄積と分析をすすめている。2017年度に実施する予定であった一郡の現地調査を2018年度におこなうこととしたため研究期間を延長したが、計画全体としては研究目的の達成に向けておおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度に実施予定であった中央乾燥平原内の一郡について、世帯聞き取り調査の実施を予定している。また、ミャンマー中央平原における研究成果の一般化範囲と可能性を検討するために東南アジアの他地域を専門とする研究者を招いた研究会開催を予定している。それらを踏まえて調査研究成果を取りまとめ本研究計画を完了する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度に研究対象地域内の2郡で調査実施を予定していたが、そのうち1郡での調査完了に想定以上の期間を要することとなり両郡の立地も離れ異なる行政管区に属するため、別時期にあらためて残る1郡の現地調査を実施することとした。代表者の他業務との兼ね合いで、これを年度内に遂行することができなかったため、補助事業期間を延長した上で2018年度にこの残る1郡での現地調査をおこない計画を完了する予定である。
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