本研究は、辺疆民族に対する中華民国政府の制度や政策が、台湾へ撤退後どのように再構築されたのか、明らかにすることを目的とする。具体的には中国大陸の周縁部、すなわ「辺疆」と位置づけられたモンゴル、チベット、新疆などの地域と、そこから台湾に渡ってきた「辺疆民族」(モンゴル、チベット、ウイグルなどの人々)に焦点をあて、「辺疆」の要素が台湾政治や社会でどのような位置を占めてきたのか、それが台湾の国家統合にどのような特質を与えたのか明らかにすることである。 平成29年度は、前年度に得られた結果をもとにして現地調査・資料蒐集を行ない、とくに以下の2点を中心に調査研究を進めて研究の深化をはかった。 (1)内モンゴル・新疆・東南アジア・台湾における現地調査:台湾に渡った「辺疆民族」の足跡をたどって内モンゴル・新疆・東南アジア・台湾で現地調査を行った。あわせて現地の史料館、図書館、博物館などで文献蒐集をおこなった。台湾では蒙蔵委員会などを訪問し、関係者らにインタヴューを実施した。 (2)日本国内での調査:第二次大戦末期に日本に渡ってきたモンゴル人学生の多くが戦後も日本に残り、中華民国政府と中華人民共和国政府のエリート獲得競争のはざまで、彼らは日本にモンゴル人社会を築いていった。中華民国政府との関係を明らかにするため、資料を蒐集した。そこで得られた知見は、内蒙古師範大学で開催された“抗日戦争時期的内蒙古”国際学術研討会で「抗戦勝利前後的偽蒙疆政権留日学生 」のタイトルで口頭発表をおこない、研究のブラッシュアップをはかった。
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