研究課題/領域番号 |
26360035
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
金谷 美和 国立民族学博物館, 民族社会研究部, 外来研究員 (90423037)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 災害 / 手工芸 / 国際研究者交流(インド) / ローカル文化 / カッチ地方 / 復興支援 / 地下水 / 更紗 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、2001年に発生したインド西部地震で甚大な被害をうけ、生業を復興するために新村を建設途上の更紗(染色品の一種)の生産者たちが、「手工芸」をコミュニティ資源として、ローカル文化の再編を行っている過程を明らかにするというものである。平成26年度は、9月に13日間、2月に23日間、インドにおいて現地調査を行った。そして、次のことを明らかにした。 1.移住状況について生産者組合代表者にインタビューした。また、新村においてすでに移住している100世帯全戸の世帯調査を行った。それにより、新村への移住状況と、染色業の復興程度を明らかにするための基礎的データを得ることができた。 2.被災した旧村において、生産者にインタビューを行った。また、ブジ市役所において、産業用の井戸水利用に関して担当者から情報収集した。それにより、染色業復興の障害となっている地下水位の低下の進行程度について明らかにすることができた。 3.新村において、地下水位の低下を克服するための染色排水の浄化システムの設置が計画されている。組合と支援NGOの双方から聞き取りを行うことによって、浄化システムについて情報を収集した。 4.現地社会において「手工芸」生産者の支援をおこなっているNGOのシンポジウムに出席し、支援状況について担当者から情報収集を行った。また、「手工芸」生産者の支援をおこなっている別のNGOの代表者にインタビューをおこなった。それにより、1970年代から現在に至る、現地社会の「手工芸」支援について明らかにするためのデータを収集することができた。以上の現地調査で得た研究成果を、9月に民族芸術学会の研究大会、10月に岡山大学で開催された研究会において発表をし、それぞれ参加者との活発な議論をすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2001年に発生したインド西部地震で甚大な被害をうけ、生業を復興するために新村を建設途上の更紗の生産者たちが、「手工芸」をコミュニティ資源として、ローカル文化の再編を行っている過程を明らかにするという研究目的のために、平成26年度に次のような課題を設定していた。 (課題1)震災前の染色業の生産形態の解明:新村への移住者が、移住前に居住していた村と生業について明らかにするために、移住者の移住前の居住村のうち、翌年度以降に調査を実施する村の選定を行う。 (課題2)被災者と支援者にとっての「手工芸」の意義の解明:「手工芸」生産者と新村建設の支援者・団体が、「手工芸」という概念や意義についてどのような見解をもっているか明らかにするために、新村建設の支援に関わった諸団体や個人の全体像をつかみ、翌年度以降に聞き取り調査を行う対象を選定する。 課題1については、新村にすでに移住したすべての世帯について世帯調査を行い、出身村と移住前の仕事の形態について明らかにした。そのデータにもとづいて、平成27年度以降に調査する村の選定を当初の予定通り行うことができた。また、GPSと関連ソフトウェアの使い方をマスターすることができた。課題2については、支援団体のうちインドを拠点とする2つにインタビューを行い、支援内容や経緯についてデータを得ることができた。また、両者とは継続的に調査を行う了承がとれており、必要に応じて協力する体制を作ることができた。海外を拠点とする支援団体については、十分なデータを収集することができなかったものの、研究課題に合致した聞き取り対象者としていくつかの支援団体を選定することができた。したがって平成26年度の研究は、おおむね当初の予定通り達成することが出来たと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の推進方策については研究計画のとおりで、特に変更を予定していない。平成27年度には、8月にインドにおいて現地調査を行う。 ・新村の建設過程について、組合代表と生産者に聞き取り調査を継続して行う。さらに、平成26年度の研究で選定した村の染色業について聞き取り調査を行う。 ・平成26年度に選定した、支援者への聞き取り調査を行う。特に、新村建設支援における「手工芸」の意義と見解について、十分なデータを収集することを目指す。 また、研究発表を予定している。7月に、オーストラリアで開催されるICAS9にて、さらに7月に京都で開催される南アジア研究集会、11月に大阪・国立民族学博物館で開催される共同研究会の3回の研究発表を行う。インドにおける現地調査のために、海外旅費を用いる。また、国内研究発表のために、国内旅費を用いる。オーストラリアでの学会発表は、別途研究費により予定している。学会発表のための英文校閲費、データ整理のための研究補助の謝金を予定している。
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