研究課題/領域番号 |
26360036
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研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
石田 正美 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 開発研究センター, 研究センター長 (10450488)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | タイ東北部 / ベトナム中部 / 観光 / 姉妹都市関係 / 留学 / コネクティビティ |
研究実績の概要 |
平成27年度の調査では、東北タイ、ベトナム中部、ラオス中南部から成る地域は、ラオスのタイとベトナムとの国境が近接した地域で、ベトナム中部でタイ人観光客、ラオス人留学生が増えた実態が明らかになった。 平成28年度は、ベトナムとタイの出入国データと大学の留学生数のデータを収集、またベトナム中部の大学および旅行代理店のヒアリングを実施した。データ収集について、タイではタイ東北部の国境の2012~2016年のタイ人と外国人の出入国者数と、2013~2016年のコンケン大学の外国人留学生の推移のデータの入手ができたが、2012年以前のデータと国別留学生の数のデータは入手できなかった。他方、ベトナムについては、国別出入国者数のデータが2005~2015年で入手でき、2007年以降タイ人入国者が中国、韓国、日本、米国、豪州に次いで多くなったことが明らかになった。他方、国境ごとの出入国者数は、出入国記録のデータ化が進んでおらず、入手データは国別国境のごく限られた年に留まった。 ベトナム中部のヒアリング調査では、2016年時点のラオスからの留学生数が、クアンナム大学で179名、ダナン大学で517名、フエ大学で310名、ハティン大学で1,900名、ビン大学で642名であることが明らかになった。また、タイから陸路を通じた旅行者が減少する一方、Bangkok Airwaysがバンコク-ダナン間に就航させたことで、タイ人旅行者が増加に転じていること、ベトナム中部で所得増に伴い、ラオスとタイを陸路で旅行する観光客が増えていることが明らかになった。これらの結果は、2016年12月に外務省とOECDの会議でコメンテータを受けた際報告したほか、2017年2月のラオスの公務員・学術関係者向けセミナー、2017年4月のアジア経済研究所とアジア開発銀行の共催セミナーで、道路インフラの経済効果として報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
3年プロジェクトであるのに、4年目に入ってしまった点では、「やや遅れている」との評価になる。1年目は、他の業務との関係で、ほとんどプロジェクトを進めることができず、事実上2年目からスタートした点を考えると、「おおむね順調に進展している」に近い評価となろう。 一方、当初予期しなかったことも多数あった。第1に、課題のひとつであったタイからラオスとベトナムを経て中国に果物を運ぶ越境商人は、ある程度の商人の目星を付けていたが、何度も依頼しても面会が実現しなかった点が挙げられる。第2は、ヒトの交流は、経済回廊を通じた流れを当初想定し、東西経済回廊を差し当たり調査対象としたが、同回廊の半分であるタイとベトナムの間の沿道を調べてみると、東北タイとラオス中南部、ベトナム中部に、ヒトの交流が広がっていたことがわかった。なお、陸路を越境する観光客については、想定通りタイからベトナム中部への観光客が増えたことがわかった。第3に、越境留学生については、ラオスからベトナム中部への留学生が当初想定していた以上に大きな動きをみせていることがわかった。第4に、観光客と旅行者に加え、広域の自治体ベースで姉妹都市関係を結び、毎年場所を替えて交流している実態も明らかになった。第5にデータの収集は、一定の成果を収めたが、検証に必要なデータがすべて収集できたわけではなかった。 今後は、当初予定した越境商人の調査は行わず、また複数の回廊の調査には拡大せず、東西経済回廊を含むタイ東北部とラオス中南部、ベトナム中部から構成される広域の観光客の越境、留学生の越境、姉妹都市関係に限定して、研究成果を取りまとめていくこととしたい。同時に研究成果の普及として、現地の人々を前にしたセミナーを開催していきたい
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今後の研究の推進方策 |
すでに研究が4年目に入ったことで、今年度はこれまでの研究成果の普及に努めたい。これまでの研究成果については、ラオス政府および学術関係者を前にしたセミナーやアジア経済研究所とアジア開発銀行のセミナーなど政策提言型セミナーで報告しているが、調査を行った関係機関に還元する意味で、ベトナム中部の2都市とコンケンでセミナーを開催し、成果をまとめていくうえで求められるデータや資料の収集に努めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度はタイの共同研究機関との間で現地のフィールド調査を予定していたが、共同機関の都合で7月か12月でないと実施が難しいとのことで、実現したかったことなどが影響した。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、現地でのセミナーを計画することに予算を費やす一方、追加的調査にも予算を費やす。
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