研究課題/領域番号 |
26360038
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
三宅 良美 秋田大学, 国際資源学研究科, 教授 (70396547)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Narrative Analysis / ディスコース分析 / インドネシア9.30事件 / ナラティブ分析 / ジェンダーと言語 / 感情と言語 / 犠牲者のナラティブ / レジスター |
研究実績の概要 |
9;30事件の犠牲者のナラティブ研究について。 2016年3月再びJakartaのインタビュー対象者、すなわち、犠牲者高齢者住宅を訪れインタビュー、資料収集を行った。3月にはJogjakartaにおいて再び犠牲者の第二世代であるPipietと会談、Pipietが紹介するIbu Hartini, Ibu Endang Lestariへのインタビューが可能であった。この二人のインタビューは、ヴィデオ撮影を行い、そのトランスクリプションがほぼ完成している。8月はじめ、アジア・アフリカ言語文化研究所 塩原朝子教授主催、Kota Kinabaluでのドキュメンテーション・ワークショップに参加させていただき、その際に、このインタビュー状況、結果を発表し、コメントを仰いだ。2017年3月のはじめは再び上記の高齢者住宅を訪れ、ヴィデオ撮影、および男性犠牲者へのインタビューを行った。インタビューはこの時点で14名の犠牲者に行っている。そのうちのほとんどの人々には何度も面会し、インタビューも同じ質問も含め、数回行うことによって、個人のナラティブの変遷についても注意すべき点が見られた。インタビュー、トランスクリプションの流れで行ったデータの研究発表は、2014年イスラエル・ハイファ大学で行われたアジア学会での発表と、2017年5月4-6日Langkawiで開催されたISMIL (マレイシア・インドネシア言語学会)での発表がある。犠牲者の語りの特徴、とりわけ、その会話構造について報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2大都市JakartaおよびJogjakartaに住む9,30事件の犠牲者へのインタビューは、最初の年から毎年数回インドネシアを訪れてはインタビューや会談を続けている。当初の予定のように、多くの人々にインタビューをしてデータを集めるという、量的研究よりは、数少ないが数名のひとに何度か訪れ、同様の話を何回か行うことによって、ナラティブの特徴を理解していくという方法論に変わっていった。犠牲者たちは全てインタビューの申し出を快く受け入れてくれている人たちであり、彼らのオープンネスと豊富な知識に感心することが多い。そのような理由から豊かな数のインタビューができている。 一方、インタビューヴィデオ,ボイスレコーダーに保存している会話のトランスクリプションがすべて終了していない。トランスクリプションは時間とエネルギーを必要としており、そのための物理的環境が完璧ではない。 また、分析にあたり、訊きたいことが再び出てくることがある。当初の予定とはことなり、インタビューをする相手の方々はインドネシアの各地域ではなく、JakartaとJogjakarta に住まうひとだけに絞った。 トランスクリプションを一人でやってきており、いくつかのわからない部分がある。これをインドネシア母語者の援助を得て完成しなくてはならない。
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今後の研究の推進方策 |
2017年7月 国際プラグマティクス学会において、9.30事件犠牲者らのナラティブの言語特徴について発表する。アイデンティティーの言葉、代名詞、一人称の使用法に集中する予定である。 8月 ジャカルタおよび中部ジャワのインタビューを再び行い、わからない部分、確認したい部分について尋ねる。9月にはその集大成として論文を投稿する。犠牲者らの語りのトピック、話の流れ、また、語ることは犠牲者たちに何を意味するかを考察していく。ここまで対象はジャカルタに住む犠牲者たちと中部ジャワに住む犠牲者たちに絞ったが、網一つのコミュニティーであるウォノサリの人々にインタビューができたら幸いである。これまでのインタビュー、データ収集でわかったことーーとりわけ、犠牲者たちは実際の暴力シーンや拷問について語ることを望まないーーが、この実証と、拷問についてのメタディスコースの問題についてこれから考えていきたいと思う。また、インタビューのトピックとして、家族との関係、人生観、さらに将来のついての展望など、個人個人の意見について今後丁寧に聞いていきたいと思う。 秋には、さらにその議論を発展させて、犠牲者としての経験の語りとそこにある言語的と特徴についての論考を深め、プラグマティクス学会において発表し、助言、コメントを伺いたい。そして、今後の書籍出版につなげて行きたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年は、インドネシアへの訪問調査期間が短く(2017年3月数日間)、また、国際学会参加への費用は、インドネシアが一度(6月)、メルボルンが一度(7月)で、多く使うことがなかった。機器を購入する必要がなかった。インドネシアのほかの地域に住まう人々にインタビューを拡大させるべきであったかもしれないがそれができなかった。また、当初の研究計画では、インタビューの対象者を日本に呼びシンポジウムを開きたいというものがあったが、対象者が高齢者であるために、この計画が実行されるまでにいたらなかった。この問題については、現在も、インタビュー対象者についてまとめておられるMs.Pipiet (Jogjakarta在住)の意見を伺っているところである。
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次年度使用額の使用計画 |
いままで多くの方々のナラティブの録音、ヴィデオを撮ってきたが、このドキュメンテーションをできるだけ多く完成させることが必要である。 また、そのドキュメンテーションの研究にしたがって、2017年 5月マレーシアLangkawi島で開催されるISMIL(インドネシアマレーシア語言語学学会)に参加。これまでの調査の中間結果を発表する。7月、北アイルランドBelfastで行われるIPrA国際プラグマティクス学会で上記のISMILでの発表をさらに発展させたものを発表する。8月、10日ー24日ほど:再びJawa,中部ジャワにインタビューに向かう。今までJOGJAKARTA市内に住まう人々にインタビューをしてきたが、この8月にはジャワの農村部Wonosariに住まう人々を対象にインタビューをすることにより、さらに彼らのナラティブの特徴を探る。次年度は最後の年になるので、書籍出版の可能性を探る。
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