研究課題/領域番号 |
26360039
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
洪 賢秀 東京大学, 医科学研究所, 特任助教 (70313400)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 出生前遺伝学的検査 / 東アジア / 利用状況 / 政策 / ジェンダー / インタビュー |
研究実績の概要 |
近年、遺伝子解析技術の急速な発展は、その応用範囲が多様化しており、人胚や胎児を対象とした検査も社会に普及してきている。本研究では、東アジア、とりわけ日本とは規制状況の異なる韓国・台湾と、近年めざましい遺伝子技術の発展を遂げている中国を対象に「出生前遺伝学的検査」が各社会にどのように導入され、普及してきたのかについて社会的背景を踏まえて比較検討する。その過程で、女性がどのような社会的文脈(政策や言説)や人間関係において「出生前遺伝学的検査」を受容するのかに着目しその詳細を分析する。また、東アジアにおける「出生前遺伝学的検査」をめぐる政策の諸課題を抽出し、東アジアで情報を共有するための発信のあり方や必要な施策を検討することが目的である。 東アジアで唯一先進国である日本では、出生前検査についての利活用について、慎重な姿勢を見せている。一方で、韓国、台湾、中国では、人口抑制政策として家族計画のもとに近代化を推し進めてきた共通の社会的背景がある。また、近年では、国境を越えて技術の導入やサービスが展開されており、強い親子関係の絆をもつ東アジアでは、本技術について独自の利用の可能性が示唆されている。このような状況のなか、「出生前遺伝学的検査」の適正なサービス利活用について一国だけで規制・管理するのでは限界がある。そのため、本研究は、浮上してきた課題への次のような対応ができると考えられる。1)「出生前遺伝学的検査」の受容をめぐる社会的議論の多面的・総合的検討による東アジア共通の課題を抽出、2)「出生前遺伝学的検査」サービス利用前後におけるジェンダー的視点による分析により、各社会におけるバランスのとれた議論構築を目指した対話への提言、3)東アジアにおける「出生前遺伝学的検査」の利用実態と各社会での対応を把握することで、近隣諸国における最低限のルール作りのための基礎資料の作成。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究計画に基づき以下の研究活動を実施した。 1)日本、韓国、台湾、中国における遺伝子解析技術、遺伝子検査ビジネス、出生前検査に関連する文献や資料を調査した。これらの資料を基にインタビュー調査の準備を行った。2)日本における「出生前遺伝学的検査」に関する研究会への参加、受検経験者を対象にインタビュー調査をした。3)韓国において「出生前遺伝学的検査」サービスを提供する側に実施状況や実施に関する考え方についてインタビュー調査を実施した。また、ステークホルダー側にも遺伝子検査に関連した議論や今後の規制のあり方についてインタビュー調査を実施した。(インタビュー調査においては、一人約1時間を予定しており、事前にインタビューに関する依頼状を送り承諾を得た。)平成26年度は、これらの研究調査を通して、東アジア、とくに日韓を中心に「出生前遺伝学的検査」の提供状況について情報を収集し、今後の調査についての論点を検討した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は日・韓・台・中の「出生前遺伝学的検査」関連の広告やマスメディアなどの資料を対象に「遺伝」の言説分析を行い、各国の認識の違いを、人口抑制政策・女性の身体・各社会での女性の位置づけと関連づけて分析を行う。また、台湾と中国における「出生前遺伝学的検査」サービスの政策および提供状況を把握するために、ステークホルダーおよびサービス提供側に個人インタビューを実施する。これらの調査を通して、東アジアにおける「出生前遺伝子検査」に関する文化的・ 社会的認識や論点を抽出する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の計画では、資料整理、翻訳代、外国語テープ起こし代を計上していたが、収集した中国語の資料のうち翻訳に出すべき資料を厳選する必要が生じた。そのため、翻訳およびテープ起こしは、来年度依頼する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度、中国語の資料の翻訳およびテープ起こしを依頼し、その謝金として使用する予定である。
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