研究課題/領域番号 |
26360040
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
姫岡 とし子 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (80206581)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ジェンダー / ナショナリズム / ネイション / ドイツ / 右派女性運動 / フェミニズム / 第一次世界大戦 / 反フェミニズム |
研究実績の概要 |
本年度は、第一次世界大戦と女性団体との関連について考察した。1,すべての女性団体が大戦中に祖国支援活動を行い、左派の社会民主党系、中間のリベラル・カトリック系、右派のナショナリズム諸組織の間で城内平和が達成され、協力ないし妨害しあわない形で銃後の活動が行われたこと、2,女性の協力の必要性から市町村や国家の組織内に進出する女性が増え、その実績を鑑みてリベラル系女性運動が女性参政権を掲げるにいたったこと、3,戦争末期には右派系があくまで勝利の平和にこだわり、民主化進展への脅威から女性参政権導入反対を主張したことを指摘した。その成果は、「第一次世界大戦中ドイツでの戦時支援と女性の地位」公益財団法人史学会(編)『災害・環境から戦争を読む』山川出版社、2015年月11月で公表した。またこの書物では、編集も担当し、「はじめに」も執筆した。 その他、18世紀後半の啓蒙の時代にジェンダーの二項対立図式が登場するが、その時点ではまだ男性の感性を重視していたのに、19世紀初頭にナショナリズムが台頭して、「戦う男性像」が登場したことを指摘した論文「優しい父親・戦う男性-近代初期ドイツのジェンダー・階層・ナショナリティ」落合恵美子・橘木俊詔(編)『変革の鍵としてのジェンダー―歴史・政策・運動』ミネルヴァ書房、2015年8月も、公刊した。さらに、『戦場の性ー独ソ戦下のドイツ兵と女性たち』を監訳し(岩波書店、2015年12月)、戦争と性に関する解説論文も執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の重要課題である植民地については、まだ論文を公開するにはいたっていないが、史料や文献をかなり収集し、その読解も進んでいる。先に周辺ないし関連事項をかため、公表するという形で課題が遂行しているが、今後、どこに焦点を当て、どのように研究を推進していくべきか、構想が進化している、という意味で研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本年は、まずスイスのチューリヒおよびバーゼルで行われる「スイス女性参政権獲得50周年記念シンポジウム」に出席し、女性参政権について、ドイツと日本を比較の観点から考察する報告を行う。その後、ドイツで史料・文献を収集する。その後、史料の読解を進め、植民地とジェンダーに関する論文の執筆準備を行う。2月頃、再度、渡独し、最後の史料収集を行う予定。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度、繰越金が80万円あり、本年度は、中国、ドイツと2回、海外に出たこともあり、本来の予算より多く支出した。次年度に国際学会での報告が決まっており、その経費に回すため、残金を残した。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、2回、ドイツに行く予定である。その費用にあてる。また、国際学会で報告するため、その原稿の校閲謝金としても支出予定。
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