今年度は、6月にスイスのチューリヒで行われた「ポストコロニアリズムとフェミニズム」、バーゼルで行われた「バーゼル市女性参政権50周年記念」のワークショップに出席し、両会議でヨーロッパとの比較の観点から日本の女性参政権獲得と反女性参政権をめぐる闘いについて報告した。東洋に属する日本に対しては、他のアジア諸国と同様にオリエンタリズムの観点で捉えられがちであるが、そうではなく、日本自身がオリエンタリズムを内面化して、それを脱亜入欧のための基盤としていた。日本の女性参政権運動はヨーロッパとは異なり、大衆的な基盤をもたなかったため、女性参政権に賛成する男性議員と密接に連携しながら運動が進められた。反女性参政権の理由はヨーロッパと同じ、家庭義務であった。また民主主義との結びつきが前掲化されている自由民権運動について、ナショナリズムとの関連を指摘し、参政権に関連づけた。 セクシュアリティを中心とした戦争とジェンダー研究も推進し、戦争と性暴力の関連について比較史的に考察し、11月末の西洋近現代史研究会や12月初旬のジェンダー法学会など、いくつかの研究会・学会で報告した。性暴力に関する語り方についても、性暴力がドイツで不可視化されてきた経緯と関連して考察した。植民地については、異人種婚を中心に、その総督府での禁止の過程、そこでの現地人の捉え方やドイツ人との差異化の仕方、これに関する女性団体の対応、男性団体との確執などについて、収集した資料を読み進めて、まとめる方向を模索した。
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