本研究は、継続的に働いてきた既婚女性労働者に焦点をおき、彼女たちの労働と生活が地域労働市場においていかに変化したのかを明らかすることを課題としている。既婚女性が継続的就業を担ってきた地域の調査研究によって、既婚女性労働者や彼女たちをとりまく家族、地域の女性就業に関する価値意識、および企業や行政による女性の継続的就業を促す諸施策を検討した。そこでの分析の軸は、男性が一人で働き、妻が主婦であることをよしとする近代家族規範との距離である。本研究は、既婚女性の継続就業を促す歴史的な基盤がこうした地域に蓄積しており、近代家族規範の影響を受けることはなかったという事実である。
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