研究課題
本研究の基礎となるのは、清末・民国期の中国主要都市部で流行した新しい媒体、漫画雑誌等における図像からみえる政治・文化転形についてジェンダー観点をも加えて分析する研究であった。それを政治激変期の中華人民共和国成立後についても、民国期の漫画家と多く重なる陣容で1950年代を通じて刊行された『漫画』月刊に注目して分析する研究である。また、中国の近代文化、図像文化に大きな影響をもたらしながらそれについての研究の少ない、西欧ならびに周辺アジア諸国との関連の考察をもめざした。これまでも注目してきた20世紀希少の中国女性漫画家、梁白波に対するドイツのK・コルヴィッツの思想、アートの影響が、ベルリンで講演と併行した美術館巡りでまず確認された。平成27年は成果出版に時間をとられて海外調査が困難であったため、平成28年度に実施することになったロシア(モスクワ、サンクトペテルブルグ)、インド(仏教寺院等)での図像収集により、比較研究が可能となった。ロシアでアヴァンギャルドや社会主義のアートの中国への影響はもとより、中国民間風俗画のロシア近代アートへの影響も当地に赴くことによって確認できた。また中国でも、1930、40年代の民間アートの様相の一端を広東の当時の港町や香港において目の当たりにすることができた。同じく平成28年度には中国国家図書館・北京大学、米国スタンフォード大学図書館にて復刻もない主要テキスト『漫画』月刊を不揃いながら可能な限り、撮影することができた。これにより清末に始まっていて辛亥革命に結びついた転形を視野にいれた長期にわたるパースペクティブで社会主義革命後の激動時代の社会主義プロパガンダ・アートを考察しえた。同28年度は北京、香港等での関連国際シンポジウムで研究発表し、また概略は『中国近代の思想文化史』岩波新書にまとめたが、国内外での成果発表、発信は今後も期待できる。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 6件)
光田剛編『現代中国入門』筑摩書房(図書所収論文)
巻: 1 ページ: 131-154
Zachman, Urs Matthias ed.,Asia after Versailles:Asian Perspectives on the Paris Conference and the Interwar Order, 1919-33, Edinburgh University Press(図書所収論文)
巻: 1 ページ: 212 -236
小浜正子・小倉渉・佐々木愛・高嶋航編著『中国ジェンダー史研究入門』京都大学学術出版会
巻: 1 ページ: 印刷中