研究課題/領域番号 |
26360045
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
Essertier Joseph 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70589283)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ローマ字運動 / リテラシー / 読み書き能力 / 言文一致 |
研究実績の概要 |
本年は言文一致運動の歴史を研究し、以下の論文にまとめた。 「危険なローマ字運動:暗い1930年代に日本語のローマ字使用を主張した斉藤秀一」, New Directions 34(2016年3月31日)。言文一致運動は文書の音声主義で口頭文体を可能にする目的があったならば、ローマ字運動が同じゴールであった。1930年代のローマ字運動について考えて、徹底的な音声主義はどこに行くか検討した。 明治初期、日本の教育のひとつの問題点は、漢字学習に多くの時間を費やす必要があるということであった。そのため、教育を受ける機会に乏しい弱い立場にある人々(部落民、労働者階級、女性など)は、文字の読み書きに当然支障があった。この問題点の革新的な改良方として、文字数の少ないローマ字を採用することを主張し、さらには国際言語としてエスペラント語を普及させようとしたのが齋藤秀一である。齋藤秀一は山形県の小学校教師であったが、日本国内外の著名人との交流を持ち、中国、インドシナ、インドネシアなどのアジアのローマ字運動の論考を集めた。しかし、外国との文通、反戦傾向の言動ゆえ、1938年に治安維持法違反で逮捕され、肺を病み、釈放後の1940年に病死した。 齋藤秀一の32年という短い生涯の中で彼は多くの論文を残し、それを研究することで彼のビジョンを垣間見ることができる。齋藤秀一は誠実に社会貢献しようとした優秀な学者であったが、彼の思い描いた日本のビジョンはあまりにも斬新でユニークであったため、時代はまだ彼を受け入れる時ではなかった。齋藤秀一は、山形の田舎で貧しい人々にとって知識の獲得を阻害する要因が何であったかを痛いほど知ったに違いない。齋藤秀一が提唱した、多くの人々が容易に知識を獲得できるようにユニバーサルデザインされた文字の採用は、現代においても先駆的である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
明治時代には貧しい女性も貧しい男性もエリートの知識階級の人々と比べて文字を勉強する時間とお金の余裕がなかったから、新聞を読んだり手紙を書いたりできるほど、なかなか上手にならなかった。そこでその問題や日本の「国語国字問題」を一番明らかにしたのは、1930年代の斉藤秀一だったかもしれない。そうすると、彼の論文を再検討する必要があるが、手に入りにくい彼の遺した文章を手に入れ、分析し始めることができた。 清水紫琴の文化歴史での意義を理解するためにも、日本の識字率の改善を目的にした、言文一致運動と重なっていた運動についても調べる必要があった。特にローマ字運動とエスペラント運動両方に大きく貢献しリーダーシップを取った齋藤秀一の思想を理解するために去年度進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
去年度文字とリテラシーの関係について齋藤秀一のテクストを通して総合的に考えることができたので、今年度は貧しい女性のリテラシーにフォーカスし、貧しくても文字と文章の力を自分の物にし、「言」だけではなく「文」でも表現できた女性について研究する。そうすれば清水や齋藤、二葉亭四迷、田口卯吉などの考えと活動の意義を理解できるようになると思う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の方が去年度より研究史料をたくさん集める必要がある。今年度必要な旅費が多くなります。それから、デスクトップパソコンはウィンドウズとリナックスのパソコンをこの研究のためにうまく使用できるためにカスタムでパソコンをデザインしてもらったが、そのデザインについて考えるのは時間がかかったので、去年度使用額を少し今年度使用額にさせてもらったためです。
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次年度使用額の使用計画 |
額の半分以上は図書館に行き、史料を集めるために使用する。研究史料をスキャナーでコピーを撮ったりデジタルカメラで写真を撮ったりし、OCRソフトで史料をデジタル化し、他の研究者にシェアーするために今年度新しいパソコンと質が高いモニターを購入する。コピー代にもたくさん使う。
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