本年は言文一致運動の歴史を研究し、以下の二つの論文にまとめた:1.“Kotoku Shusui and Japanese Linguistic Imperialism”(英語)、New Directions 35(2017年3月31日)と 2.「あるアメリカ人の日本語学習体験」『ことばと文字』7(公益財団法人日本のローマ字社、2017年春) 1について:革命的な文体を主張した日本人として一番知られているのは、『浮雲』という小説を書いた二葉亭四迷であるが、大衆の文化、科学、社会の進歩のために革命的な文体を作った、「習いやすい、読みやすい文体のパイオニア」は誰であるかというと、私は以下の三つを上げる:1.ローマ字表記の言文一致体を提唱した田口卯吉(1850年~1905年) 2.先覚的フェミニスト(女権論者)と小説家であり、漢字の少ない談話体を発表した清水紫琴(1868年~1933年) 3.ローマ字表記の言文一致体(方言のローマ字表記も)とエスペラントを提唱した齋藤秀一(1908年~1940年) 幸徳秋水は現在の国語に近い言文一致体を1901年に提唱したが、上記の三名と比較すると、習いやすさと読みやすさの面では劣っている。幸徳秋水は初期の社会主義者であったが、彼の言文一致体は日本政府の言語帝国主義に繋がる結果となった。言語帝国主義と繋がることのない文体は、1930年代の齋藤秀一のローマ字表記の言文一致体まで世に出てこない。 2について:言文一致運動やローマ字運動、エスペラント(人工的な国際語)を意識しながら、自身の日本語学習体験に基づき非漢字使用の言語(英語)を母国語とする個人の日本語学習プロセスを述べた。
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