研究課題/領域番号 |
26360046
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
北原 恵 大阪大学, 文学研究科, 教授 (30340904)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 美術 / ジェンダー / 戦争 / 軍事主義 / 植民地 / 女性 / 移動 / 表象 |
研究実績の概要 |
本プロジェクトの目的は、1930年代から50年代にかけての日本及び東アジア圏の女性アーティストと戦争との関わりについて、ジェンダーと軍事主義、移動の視点からとらえ直すことである。そのため、(1)アジア・太平洋戦争期と占領期を経た戦後における女性画家の歴史と実践の調査、(2)日本の植民地化と戦争が与えた東アジア圏の美術・文化表象のジェンダー的分析、(3)塔が生きの女性美術家自身による文章の収集と、基本文献の整理、(4)戦争画を描いた女性画家についての研究者との国際的な交流を行った。 まず初年度であるH26年度は、前科研を継承・発展させて研究体制の構築と基本文献の収集を開始した。具体的には、①「官展にみる近代美術」展覧会の協力、及び同展の調査(福岡・府中・津・神戸)、展覧会批評などの出版。②国際フォーラム「20世紀前半、二重空間の韓国に生きた日韓の美術家たち」(韓国文化院)に参加し、植民地下、あるいは戦時下の日韓の美術家と最新の美術研究の調査。③筥崎宮における所蔵作品≪大東亜戦皇国婦女皆働之図≫の調査、及び研究会開催(福岡アジア美術館)④戦前活躍した女性日本画家・谷口富美枝の調査、「船田玉樹・谷口仙花展」(呉市立美術館)、「谷口富美枝(仙花)研究会」開催・発表。(谷口富美枝研究は出版)。⑤広島県大竹市の戦時中・占領期の歴史に関する調査、フィールドワーク実施。⑥「宮良瑛子展」(丸木美術館)の調査と宮良瑛子氏の講演参加・聞取り調査。⑦「吉田博・吉田ふじを展」(一宮市三岸節子記念美術館)調査、⑧「赤松俊子と南洋群島展」(丸木美術館)調査、他学会など参加。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、まず大きな成果として、戦時中の女性団体である女流美術家奉公隊が共同制作した≪大東亜戦皇国婦女皆働之図≫(春夏の部:福岡県筥崎宮所蔵)を、初めて写真撮影を行うことによって詳細な基礎データを作ることができたことを挙げられる。重要な作品であるにも関わらず、長年倉庫に保管されたままだったために、これまで十分な検討がされてきたわけではなかった。さらに、「官展にみる近代美術展」の協力が具体的な展覧会としてかたちになり、充実した図録が出版されたことも理由として挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、平成26年度の成果を引き継いで、計画を進めていきたい。また、国際的な発信(国際シンポジウムで発表予定)を強化していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
翌年度は、海外での調査及び研究発表に重点を置くため、旅費などに経費がかかることが予測され、予算を翌年度に繰り越すように計画した。
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次年度使用額の使用計画 |
調査・発表に関わる海外旅費、国内旅費。
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備考 |
前科研で構築したHPを引き継いで運用。
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